2023 Fiscal Year Research-status Report
生物巣穴は浅海域の物質循環に重要か:生態系エンジニアリング効果の定量技術開発
Project/Area Number |
23K18053
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
杉本 亮 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 教授 (00533316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
邉見 由美 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (40829206)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 生物巣穴 / 地下水 / 流量計 / 物質循環 / 干潟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、底生生物による生態系エンジニアリング効果を物質循環学的視点から捉え直し 、巣穴を介した海底-水柱間での水と物質の移動量を定量する技術を世界に先駆けて開発す ることを目的とする。本年度の研究実績は下記の通りである。 1)小型流量計の開発:植物の樹液流計測に用いられるサップフローメーター(SFM)と内径12.8mmの塩ビパイプを使用し、巣穴を介した海水交換量を計測するための小型流量計を開発した。この流量計を用いることで、流量(流速)にして2 ml/min(0.03 cm/sec)から70ml/min(0.88 cm/sec)の範囲で両方向の流れを計測することが可能となった。 2)生物巣穴の実験的再現:日本の河口干潟を代表する造巣性甲殻類ヨコヤアナジャコは深さ50 cmほどの巣穴を構築する。生物巣穴の実験的再現のために、高さ約60 cmになる特注の大型アクリル水槽を準備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)サップフローメーターを流速計測パーツとして使用することで、微小流量を両方向で計測することできることが確認できた。 2)アナジャコ類は干潟にY字型の巣穴を構築して生息しており、種によってその巣穴の深さは、50 cmから2 m以上となることもある。今回はアナジャコ類のなかでも比較的小型であるヨコヤアナジャコを想定し、実験準備を進めた。ヨコヤアナジャコは日本の河口干潟でよく見られる普通種であり、深さ50 cmほどの巣穴を構築する。そこで、生物巣穴の実験的再現のために、高さ約60 cmになる特注の大型アクリル水槽を準備した。
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Strategy for Future Research Activity |
1)R5年度に作成した小型流量計は、実験水槽を含め、水深が25cm程度までであればすでに実用可能であるが、現場海域での使用を考えた場合、流量計の耐水・耐圧化を計る必要がある。そのため、ステンレス素材で流量計を格納しながら計測を行うことができる耐圧ケースを新たに作製し、現場海域での計測を試みる。 2)干潟にてアナジャコ類を採集し、大型アクリル水槽内で巣穴を再現させる。小型流量計を用いて実験水槽下での流量変動を測定し、センサーの感度調整を行う。また、小型流量計を実海域のアナジャコ類の巣穴に設置し、定量データを得る。特に潮汐の大きい瀬戸内海側と潮汐の小さい日本海側で測定し、波浪・潮位変動データと合わせて解析を進め、各駆動力を定量的に識別する。
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Causes of Carryover |
・R6年度に耐圧ケースの製作が必要となるため、サップフローセンサーの新規購入をR5年度は見送った。R6年度は現場使用に十分に耐えうるステンレスケースが完成し次第、サップフローセンサーの購入を行う。 ・巣穴の際現に使用する実験水槽を同時に6台購入予定であったが、事前に確認を行うために一度に購入することを見送った。すでに十分な確認ができたため、残りの水槽も購入する。
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