2023 Fiscal Year Research-status Report
An interdisciplinary study on ethical preferences for environmentally friendly agricultural products
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23K18061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中嶋 康博 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50202213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 朋昭 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (60280864)
岡本 雅子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (00391201)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 倫理的選好 / 環境保全型農産物 / 脳機能計測 / 経済心理学 / BWS |
Outline of Annual Research Achievements |
個人の食料消費行動パターンの基礎モデルを探るべく、消費者ごとに記録された購買データを解析することとした。社会環境の整備による食生活の改善を目指す行動について、消費者の食料品購買行動や食生活の実態を確認した。たとえば調理済み食品への支出の増加等に示される生活様式の変化に伴い、専門小売店やスーパーマーケットに加えて、コンビニエンスストアやドラッグストアでの食料品購入も一般的になり、食料品購買先の使い分けのパターンは多様化している。そこで消費者購買履歴データと疫学的な食事摂取状況の調査法を用い、消費者の購買行動と食生活を実態に近い形で把握し分析した。その結果、食料品購買先の使い分けのパターンによって食生活に違いが見られるかを確認したが、統計的に有意な差は見られなかった。この結果は、「コンビニエンスストアや外食の利用は健康的な食生活に寄与しない」という従来のイメージとは異なることから、地域や年代をさらに詳細に区分した分析が必要なことが明らかになった。 これまで研究グループでは、米を対象にフィールドセンサーで収集された水田の生産環境情報やドローンによる水田とその周辺の風景情報などを提供しながら、その米を実食してもらうアンケート調査を行った。その調査データを分析した結果、情報提供をすることで支払い意思額の上昇が確認できた。その分析結果をもとに、倫理的関心事項に係わる項目について消費者がどこに着目しているかを明らかにするため、購買時の支払意思額の尺度という観点から研究結果を精査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食選択に与える倫理要素の影響度を脳科学的に解明するために、脳機能計測実験の対象として、持続可能なフードチェーンに関する多くの知識と倫理的要素に対する深い共感を持つと期待されるガストロノミーレストランのトップシェフを被験者とした脳機能計測実験を計画している。トップシェフ集団の探索を行い、種々の検討の結果、日本最大級の料理人コンペティション、RED U-35の受賞者集団を候補とすることにした。これまでの受賞者総計347名のうち、日常業務で食材の調達を行っているシェフ、スーシェフ、オーナーシェフを対象として研究協力を募った結果、40名のシェフの協力意向を得ることができた。うち9名の方を対象に質問紙法を用いた予備調査を行ったところ、すべてのシェフが実際の業務において倫理要素を考慮した食材選択を行っていることが確認できた。 フィールドセンサーで収集された生産環境情報やドローンによる風景情報などが提供されたときに、倫理的関心事項に係わる項目について消費者がどこに着目しているかを、購買時の支払意思額の尺度という観点から研究成果を精査したが、このあとに実施するアンケートにおける調査項目への示唆を得るためにその分析結果を精査し、また調査環境を改めて検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳機能計測の実験内容を決定する上では、計測対象であるシェフの食選択について詳しく知る必要がある。そこでまず、RED U-35の受賞者集団を対象に、あらためてインタビューおよび質問紙調査を行う。これにより、シェフが具体的にどのような食材を扱い、どのような倫理要素を考慮しているのか、またその食選択の背後にどのような動機があるのかを明らかにする。さらに、これらの調査結果を基に、脳機能計測中に被験者に呈示する実験課題(食材評価など)と実験刺激(食材の写真など)を決定し、脳機能計測実験を行う。これらによりシェフの食選択の背後にある動機とその神経基盤を明らかにする。 なお、一般消費者を対象にした質問紙調査のアンケート質問紙調査の項目は、これまで研究グループで実施してきた食の価値に関する16項目の相対的順位(重要性)を精査して、倫理項目について再度検討する。そのアンケート項目を基にWEB調査を行い、Best-Worstスケーリング法(BWS法)によって統計的に解析する。アンケートで表明された重要度の順位付の解析結果と、脳機能計測から明らかとなる食選択の動機およびその神経基盤とを結びつけることで、倫理的要素が食選択に及ぼす影響を多面的に評価する。
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Causes of Carryover |
本課題の遂行においては、被験者として、脳機能計測が可能な健康状態にあるガストロノミーレストランのトップシェフを、多数集めることが不可欠である。しかし条件に適うシェフ集団を見出すのが、当初の予想以上に困難であった。半年余りの時間をかけ、トップシェフ、調理師専門学校など、様々な人や機関と相談した結果、上述の通り料理人コンペティションRED U-35の受賞者から協力意向を持つシェフを得ることができた。当該コンペティションは、調理技術はもとより、料理を介した社会問題への取り組みに優れた若手シェフの評価をコンセプトに掲げており、本研究課題の目的と一致する。2023年の予備調査においても良好な結果が得られており、今年度は順調に調査と実験を進められると考えている。
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