2023 Fiscal Year Research-status Report
非掘削溜池改修技術-土の吸引圧縮による一石二鳥の効果-
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23K18064
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
澤田 豊 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (60631629)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ため池堤体 / 安定性 / 圧密 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,N値が低い軟弱な土から構成される老朽化した溜池堤体を対象に真空圧密工法を適用することで,堤体の安定性向上を図るものである.具体的には正規圧密状態に近い堤体土に真空圧を負荷し,その後の除荷により過圧密状態とすることで,見かけの粘着力を増大させて,堤体斜面のすべりに対する安全率向上を期待するものである.この工法を適用した時,堤体の強度増加と同時に変形が予想される.堤軸方向への変形は地山との間の応力低下や隙間を生じさせる可能性が否定できない.そこで本研究は,真空圧密を適用する堤体の力学挙動を解明することを目的としている. 当初の計画では,軟弱な堤体の模型を作製し,模型実験を通じて力学特性を検討する予定であった.しかしながら,模型縮尺に伴う力学的相似則を満たすことが困難であることと,実務での適用を考えた場合,当工法によって得られる土のせん断強度の増加分と土の状態変化の関係性を明らかにすることが重要と考え,三軸圧縮試験で真空圧密を受ける土の力学挙動を検討する方針に変更した. 令和5年度は,最初に三軸圧縮試験の供試体で用いる試料の検討を行った.実際の溜池堤体土と見なすことができる材料を選定する必要があることから,それらの物性値として土の塑性指数や細粒分含有率に関するおおよその範囲を決定した.次に圧密非排水三軸圧縮試験の条件について検討した.三軸圧縮試験での圧密過程では,本研究の主目的である真空圧密の有無の条件に加え,実際の溜池堤体の応力状態についても考慮することが重要であると考え,通常の等方圧密に加えて,K0圧密を行うことを計画した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは異なる手法に変更したものの,試験計画については概ね検討を終え,令和6年度前半から試験に着手可能であるため,最終的な目的である真空圧密を受ける溜池堤体土の力学挙動については解明できる見込みである.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は真空圧密を受ける溜池堤体土のせん断強度増加とその状態変化を解明するため,圧密非排水三軸圧縮試験を行う.試験には実際の溜池堤体土と見なすことができる土を用いるとともに,試験条件として,通常の等方圧密に加えて,K0圧密を行う計画とする.また,溜池下流側の不飽和領域の影響を検討するため,不飽和条件と飽和条件における強度定数の違いについて既往研究の文献を調査する.
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Causes of Carryover |
当初の計画では,模型実験を通じて力学特性を検討する予定であり,模型実験を行うために必要な土槽や模型製作費を計上していた.しかしながら,模型実験から真空圧密を受ける溜池堤体土の挙動を検討するよりも,実際に近い応力状態を再現することができる三軸圧縮試験を通して検討する方が適していると判断したため,研究手法を変更した.このため,令和5年度には室内土質試験で用いる試料,試験項目ならびに試験条件を検討するにとどまり,特に大きな支出は生じなかった.一方,令和6年度には,三軸圧縮試験を含む室内土質試験の実施に必要な役務ならびに旅費が必要となることから,令和5年度のとの差額はそれらの執行に充てる予定である.
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