2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the evolution of the rotary catalysis mechanism of F1-ATPase by reconstruction of the ancestral enzyme
Project/Area Number |
23K18092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 博史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10546592)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | F1-ATPase / 祖先配列推定 / 1分子計測 / 進化 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリア共通祖先F1とα-proteobacteria共通祖先F1について、F1の各サブユニットの系統解析を行い、それぞれの分子系統樹を作製した。その後、祖先配列推定を行い各サブユニットの共通祖先タンパク質のアミノ酸配列を推定した。これらの共通祖先F1の遺伝子を人工合成し、大腸菌内で発現させ精製を行った。その結果、これらの共通祖先F1が安定な複合体を形成し、溶液系での測定によりATPase活性を持つことが確認された。また、祖先タンパク質で見られることの多い耐熱性の向上も確認された。さらに精製した各共通祖先F1の1分子回転解析を行いその回転特性を調べた。具体的には、ATP結合待ちの角度と加水分解・リン酸解離待ちの角度を検証した。これまでのところ、ミトコンドリア共通祖先とα-proteobacteria共通祖先の両方において、ATP結合と開裂が同じ角度で起こることを支持する結果が得られている。先行研究から、現存するαプロテオバクテリアの一種であるParacoccus denitrificansのF1は、ATP結合と開裂が同じ角度で起こるが、ウシミトコンドリアF1はATP結合と開裂が別の角度で起こることが分かっている。そのため今回の結果は、αプロテオバクテリア祖先がミトコンドリア祖先に進化する間ではF1の回転スキームは変化せず、ミトコンドリア祖先が現存する様々な種に進化・分化していく際にF1の1回転中の回転停止数が増加した可能性を示唆している。現在、これらの祖先F1のクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリア共通祖先とα-proteobacteria共通祖先の両方において、既に復元に成功しており1分子回転解析による回転スキームの同定にも一部成功している。構造解析についても、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析を進めており一部構造が明らかになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
詳細な1分子回転解析を進める。具体的には、ミトコンドリアF1で観察されるリン酸結合待ちと考えられる停止が各祖先F1で観察されるのかを検証する。さらに構造解析を本格的に進める予定である。得られた構造とこれまで得られている各種F1の構造情報および回転機構の情報を照らし合わせることで、種による回転機構の違いをもたらす原因や、種によらない本質的な回転特性やその原因をつきとめ、最終的にF1の設計原理についての知見を得る。
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Causes of Carryover |
3月にオーストラリアの共同研究先での実験(構造解析)を予定していたが、学務等のため日程を変更し次年度に行うことにした。そのため、この費用(物品費、旅費、その他)を次年度に繰り越し、次年度請求予算と合わせて使用する予定である。
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