2023 Fiscal Year Research-status Report
速度論および熱力学的手法を用いた"in crystallo" 酵素反応解析
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23K18117
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
村川 武志 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 清喜 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 構造生物学推進室, 主幹研究員 (00437344)
福井 健二 大阪医科薬科大学, 医学部, 助教 (00466038)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | トパキノン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は “in crystallo 酵素反応解析”の確立を目指し,非凍結測定手法であるHAG法(湿度調整と水溶性ポリマーのコーティングを用いたタンパク質結晶マウント法)を用いて,正確に温度コントロールされた酵素結晶に対して,基質および酸・塩基などを吹き付け,構造変化を経時的なX線回折測定により検出する.これにより,構造,速度およびエネルギー論的な見地に基づいた反応機構の解析を行う. 本年度は,研究試料として土壌細菌Arthrobacter globiformisに由来した銅アミン酸化酵素 (AGAO)を使用し,本酵素の補酵素であるトパキノン(TPQ)の生合成過程における,前駆体Tyr残基からTPQへの構造変化機構の解明を行った. 補酵素TPQは,酸素および銅イオン存在下で,前駆体Tyr残基から自己触媒的に生成する.このため,まず我々は銅イオン非存在下で,本酵素の前駆体(Tyr型)の結晶を作成した.得られた結晶を嫌気条件下で銅イオン溶液に浸漬後,SPring-8のビームラインに設置されたHAG装置にマウントした.結晶への吹付け気流を,窒素ガスから酸素(空気)に切り替えることにより,結晶内でのTPQ形成反応を開始した.経時的に回折測定を行い反応を追跡し最終的にTPQが形成したことを確認した.回折実験に並行し,ビームラインに設置されたオンライン型結晶顕微分光装置による測定も行った.現在,詳細な解析を行っているが,構造変化についての重要な知見が得られ,我々がこれまでに提案した反応スキームをさらに拡張できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに試料調製や測定の条件を十分に固めることができたため,スムーズに本格測定を始めることができ,良好なデータが得られている.すでに,結晶内で前駆体Tyr残基からTPQへの構造が大きく変化することを回折データおよび分光データから明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
令和五年度の本測定でおおよそのデータは取得している.本年度は得られたデータの解析と,より踏み込んだ測定を行う.実験条件をより細かく振り,また,回折測定と分光測定をリンクさせ,より定量的な構造データを得る.更にpHジャンプについての予備測定も行う予定である.
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Causes of Carryover |
令和五年度は研究費の節約に努めた結果,約50万円程度次年度に繰り越せた.これらは主に結晶調製用の試薬および測定施設(SPring-8)までの旅費に使用する予定である.
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