2023 Fiscal Year Research-status Report
環境核酸を用いた絶滅危惧種イトウの有効集団サイズ・遺伝子発現推定技術の開発と実践
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23K18145
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒木 仁志 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20707129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 雅之 北海道大学, 農学研究院, 助教 (90909904)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | ナノポアシーケンシング / イトウ / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は長鎖環境DNAの検出を目的とした第三世代シーケンシング技術(ナノポア技術)の開発を目指した解析を行うとともに、対象魚イトウの生息域における環境DNA採集を実施した。ナノポア技術についてはまず、イトウと同じくサケ科に属するアメマス、オショロコマの組織DNAを使った分析を行い、解読エラー率の推定とミトコンドリアゲノム全長配列の解読に基づく種内多型の実践的検証を実施した。その結果、ナノポアシーケンシングのエラー率は想定の範囲内に収まる一方、種内多型の正確な識別にはカバレッジを上げたコンセンサス配列の作成が不可欠であることが明らかとなった。ただし本年度後半に発売された新しいフローセルと演算能力の高いワークステーションを用いたアルゴリズム解析を組み合わせることで精度の高い解読が可能になることも示唆されており、今後はこれらを用いた種内多型検出を目指す予定である。 野外調査についてはイトウの遡上期にあたる春に道北のイトウ生息河川において1回、夏と秋には道東のイトウ生息河川でそれぞれ1回ずつの調査を実施したほか、研究協力者の協力により石狩川水系でイトウの生息が確認されている雨竜川水系からも上記解析に供することの出来る環境DNAサンプルを入手した。これらの河川では過去にも複数回、同様の手法で環境DNAサンプルを採集しており、夏の高水温等によって個体群サイズの減少が懸念される河川を含め、気象イベントの前後比較が可能なサンプルセットが揃いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らが所属・運営する研究室でのナノポア技術の使用は初めてだったが、少なくとも組織DNA分析に関しては想定された範囲内のシーケンス解読エラー率が認められており、改善の余地はあるもののスキルレベルの問題は限定的とみなせる結果が得られている。またフローセルも年度内にバージョンアップしたことで、今後より高い精度で長鎖環境DNAの検出が可能となることが期待される。また野外調査は予定通り実施済みで、今後も同様の調査を継続予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
抽出済みのサケ科魚類組織由来DNAを用い、ナノポアの新しいフローセルにおけるシーケンス解読エラー率を推定するとともにミトコンドリアゲノム中の種内多型の検出を行う。同時に高濃度・多個体由来のDNAを含むことが分かっているサケマスふ化場由来の環境DNAサンプルについてもナノポア技術を用いた解析を行い、環境DNAベースの種内多型解析の実現可能性を模索する。
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Causes of Carryover |
本年度中、研究代表者がカナダ・McGill大学において数か月間のサバティカル研修を行ったため。野外調査は研究分担者を中心に滞りなく実施されたものの、予定していた旅費の一部は次年度の調査で使用するのが妥当、との判断に至った。
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