2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒトとマウスのシナプス誘導因子の動作原理の違いから紐解くヒトの脳機能進化
Project/Area Number |
23K18151
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
吉田 知之 富山大学, 学術研究部医学系, 准教授 (90372367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和泉 宏謙 富山大学, 医学部, 技術専門職員 (00377342)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | マイクロエクソン / シナプス誘導タンパク質 / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、哺乳類の神経細胞において選択的に利用される3ー27ヌクレオチドの極めて短いエクソン(マイクロエクソン)の存在が明らかになり、脳神経機能に多様性を生む新たなメカニズムとして注目されている。また、自閉スペクトラム症や統合失調症の患者の脳において、マイクロエクソンの選択調節の異常が認められることから、ヒト特有の高次脳機能の発達にマイクロエクソンのスプライシング調節が重要な役割を担うことが示唆されている。本研究はシナプスの分化誘導を担う細胞接着タンパク質遺伝子の持つマイクロエクソンのスプライシング調節様式がヒトとマウスの間で異なることに着目して、この違いがヒトの脳機能の高度化に寄与したのか否かを検証することを目的としている。昨年度までに、この遺伝子のマイクロエクソンのスプライシングが遺伝的なプログラムによってマウス脳内で時空間的に厳密な制御を受けること、さらに神経活動のパターンによっても多様な調節を受けることを明らかにした。マイクロエクソン近傍のイントロンの系統的な欠損実験によって、これらの調節に関わるエレメントを探索したところ、神経活動依存的な調節エレメントと神経活動非依存的な調節エレメントが別個に存在することが明らかになった。現在、ゲノム編集技術を用いて、それぞれの調節エレメントを欠失したマウス系統を作出し、行動バッテリー試験に供することで、マイクロエクソンのスプライシング調節が各種脳機能に与える影響を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトとマウスの間でシナプス誘導タンパク質遺伝子のマイクロエクソンのスプライシング調節の違いを生み出す調節エレメントを見出しており、当初の予定通りに順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに見出したシナプス誘導遺伝子マイクロエクソンのスプライシング調節エレメントをヒト型にスワップしたノックインマウス系統を樹立する。系統樹立ができれば、脳内各部のシングルセル解析を行いヒト型化によってスプライシングの調節様式が変化する神経細胞種を探索する予定である。またヒト化マウス系統の行動解析を進める。
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Causes of Carryover |
学内の共同利用施設使用料が次年度に請求されるため、その分を繰り越した。また論文掲載が遅れ、掲載費用の次年度への繰り越しが必要となったため。
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