2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K18162
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小泉 修一 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10280752)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | アストロサイト / 細胞老化 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障は最大の危険因子は眼圧の亢進であると考えられていたが、日本では殆どの緑内障患者の眼圧が正常であることが明らかとなり、真の分子病態の解明と治療法の開発が喫緊の課題となっている。眼圧が正常である「正常眼圧緑内障」のモデルとしてABCA1欠損マウスがある。これは、複数の大規模コホート研究により見いだされた緑内障危険分子であり、これを欠損させたモデルマウスでは、眼圧が正常にもかかわらず緑内障様の表現型が引き起こされる。ABCA1は網膜ではアストロサイト選択的に発現している。従って緑内障はアストロサイト病であるとも言える。しかしアストロサイトの異常がどのように緑内障様の症状を引き起こすのかについては、多くは不明のままである。 アストロサイト特異的ABCA1欠損マウス(ABCA1cKO)を用い、アストロサイトの細胞老化の有無を検討した。弱年齢(3ヶ月齢)のABCA1cKOの眼組織を用い、SA-B-Gal染色法で細胞老化を解析した。眼内では、すでに細胞老化が始まっており、SA-B-Gal細胞の殆どは、アストロサイトであることが明らかとなった。そこで初代培養系を立ち上げ、ABCA1cKO由来のアストロサイトを培養し、野生型アストロサイトと細胞老化の度合いを比較した。ABCA1cKOアストロサイトは野生型と比較し、明らかに細胞老化が亢進していた。このin vitroアストロサイト老化モデルを用いての、老化の調節因子の探索、及び巻き戻しメカニズムの解明は今後の課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常眼圧緑内障動物であるアストロサイト特異的ABCA1欠損マウス(ABCA1cKO)の眼内で、早期から細胞老化が起こっていること、またその責任細胞がアストロサイトであることを見いだした。さらにそれらを元に、ABCA1cKOマウス由来アストロサイトの初代培養系を作成して、in vitroにおける細胞老化の再現及び評価系を構築することができた。ここまでの成果は、予想以上の成果であったと言える。しかし、このin vitro細胞老化評価系を用いて、アストロサイトの細胞老化の分子メカニズム及びこれを巻き戻す因子の解析が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
SAーB-Galを指標とした細胞老化のin vitro評価系であるアストロサイト特異的ABCA1欠損マウス(ABCA1cKO)由来アストロサイト初代培養系を用いて、アストロサイトの細胞老化の分子メカニズム及びこれを巻き戻す因子の解析を行う。特に、ミクログリアの関与を検討するため、先ずは野生型動物由来ミクログリアをはじめ各種ミクログリアとABCA1cKOアストロサイトの共培養系を、先ずはアストロサイトの細胞老化に対する影響を観察し、アストロサイトの細胞老化抑制因子、巻き戻し因子の探索を行う。候補因子・シグナルは、薬理学的及び分子生物学的手法によりアストロサイト細胞老化抑制との因果関係を明らかとする。さらに見いだした老化抑制因子・シグナルとアストロサイト細胞老化との因果関係をABCA1cKOマウスを用いてin vivoでも明らかとする。最後に、これら見いだした因子により、緑内障病態が抑制されること、また巻き戻されることを明らかにする。
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Causes of Carryover |
動物舎の改修工事のため、網膜アストロサイトで細胞老化が促進するABCA1cKO動物を十分に得ることが出来ず、本年度の研究を十分に進めることが出来なかった。改修工事は、翌年度春には終了する予定である。モデル動物を十分に確保したうえで、機能解析、分子生物学的解析を一気に進める予定である。
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Research Products
(19 results)