2023 Fiscal Year Research-status Report
局所エネルギー出力素子としてのひずみ分子の活用法開拓
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23K18183
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高須 清誠 京都大学, 薬学研究科, 教授 (10302168)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | ひずみ分子 / エネルギー変換 / 高エネルギー素子 / 多環芳香族炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的な化学反応では、発熱を伴って原料系から生成物系に反応が進む(発エルゴン反応)。その化学反応を素過程に分解した場合、大きなエネルギー(ΔG)を放出する過程が含まれることもある。本研究では、大きなΔGを放出しうる原料(もしくは中間体)にひずみ分子を用いることを基本コンセプトにして、素反応で放出される反応エネルギーを別の物質変化のエネルギー源として利活用できるシステム(分子素子および反応場)の開発を検討した。 第一にジオキサシクロブタンジオンの開裂を駆動力とする化学駆動の発光分子の分子デザインと合成を検討した。一部の目的分子の合成には成功したが、反応進行に伴う光出力を確認できなかった。この結果をもとに新たな分子のデザインを行い、合成を検討した。しかし、現状では標的分子の合成と単離に課題を残しており、目的の研究成果まで到達していない。 第二に、中間体として得られるシクロブタンを含むプロペラン分子の開裂反応を駆動力とする、新規分子変換反応の設計を試みた。現在、放出された熱エネルギーが駆動力となっているかのPOC獲得には至っていないが、これまでの検討では見出されなかった反応が進行することを確認した。それにより、ビアリール結合を有する多環芳香族炭化水素の新たな合成が実現できた。 これらの分子デザインおよび反応デザインのため、GRRM(Global reaction route mapping)による反応機構解析を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の課題については、目的とする化合物デザインから見直す必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
分子ひずみ解消の反応熱を別の反応の活性化エネルギーに利用するためには、エネルギー伝授の効率を高めなければならない。その戦略として、周囲の溶媒への振動エネルギーでの消費を抑制するため、ひずみ分子と伝播させたい反応基質を近接させること、すなわち局所での反応設計を検討する。モデル反応として、クラウンエーテルなどのホスト化合物にひずみ分子を結合させた化合物を合成し、ホストに取り込まれたアミドの加水分解(加アルコール分解)を化学トリガー存在下で検討し、近接位から出力されるひずみエネルギーが局所熱源(ホットスポット形成)として利用できることを実証する。最終的には生体分子(酵素ポケット等)にひずみ分子を組込み熱源としての利用を探る。ひずみ分子の開裂には、これまで蓄積した種々の化学トリガーを利用して検討する。
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Causes of Carryover |
2月に発注した消耗品の納期が遅れ4月以降にずれこむことが判明したため。研究計画の順序を入れ替えたため、1か月程度の納入遅れは影響しない。納入後、粛々と研究を遂行する。
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