2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K18198
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
榎本 将人 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00596174)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
|
Keywords | 生体恒常性 / 脂肪組織 / 性差 / 全身性応答 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有性生殖を行う多細胞動物がもつ生体システムの性差の仕組みの理解を目指すものである。この目的を達成するため、ショウジョウバエをモデルとして、組織間ネットワークによる生体恒常性の性差制御メカニズムを明らかにすることで、生体恒常性システムの性差調節とその破綻の基本原理を理解する。当該年度は、ショウジョウバエ上皮の組織再生に対して雌雄の差を調節する因子を探索するため、ショウジョウバエの脂肪体に焦点をあてたRNAiスクリーニングを実施した。ショウジョウバエ上皮に組織傷害を与えると、組織は再びサイズ・形態を取り戻していくことができる。この実験系を用いた解析で本研究開始時に脂肪体由来の液性因子がオスとメスの組織再生に対する性差調節に関わっている可能性を示す予備的データを得ていた。このため、RNAiスクリーニングの標的としてショウジョウバエのゲノムにコードされる分泌因子とした。脂肪体特異的なプロモーターを用いて、組織再生中の個体の脂肪体で様々な分泌因子の遺伝子発現をサイレンシングしたところ、オスとメスの個体それぞれにおいて上皮再生に異常を引き起こすRNAi系統を複数単離できた。興味深いことに、同定した因子(サイトカイン、神経ペプチド、リポタンパク質など)いずれも摂食や飢餓に応答して発現・活性レベルが変動する遺伝子であった。また、スクリーニングで得られた因子群の遺伝子発現を正常な個体(定常状態の個体)の脂肪体で抑制しても、オスとメス共に組織のサイズ・形態に異常は認められなかった。このことから、本スクリーニングで得られた因子は上皮恒常性の性差調節に関わる因子であることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織再生の性差調節に関する脂肪体由来の分泌因子を複数同定できたことから、研究はおおむね順調に進行していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はRNAiスクリーニングを引き続き進めつつ、同定した因子それぞれについて上皮組織に直接作用しているか、または別の組織・器官を経由することで雌雄の違いをシステミックに調整しているか解析を進める。また、組織再生に対するスクリーニングで得られた因子が腫瘍発生など組織傷害以外の生体変化に対しても雌雄間の差異を制御しているか、組織恒常性の性差調節に対して別の観点からも研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
本研究開始時に購入予定であったショウジョウバエ系統や試薬等の一部が他の研究プロジェクトと併用可能になったことや、国内外の研究機関の研究者から分与してもらったことで購入費用や各種ショウジョウバエ系統の維持・飼育に関わる消耗品費が抑えられた。次年度以降は、各組織特異的なマーカーやシグナル分子を可視化するための蛍光プローブや抗体など多くのショウジョウバエ系統や試薬類が必要になるため、これらを購入する費用として翌年度分と合わせて使用する予定である。
|