2023 Fiscal Year Research-status Report
イメージングと空間オミクスによるがん発生超初期過程の共通分子基盤の解明
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23K18242
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石谷 太 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40448428)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | がん発生超初期過程 / イメージング / 空間オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
従来のがん研究の多くは、病理学的に検出可能なレベルにまで成長した発生後期のがんを対象に行われており、その結果、がんの進展・悪性化に関わる分子機序が数多く報告されてきた。しかし、検出困難ながん発生超初期過程は未だ謎に包まれている。がんは単一の前がん細胞を起源として生じると考えられているが、前がん細胞が隣接細胞とどのようなコミュニケーションを取りながら初期の腫瘍を形成するのかは不明である。また、がんの発生には加齢に伴う変異の蓄積や生活習慣が影響を及ぼすと考えられているが、こうした変異蓄積や環境要因が前がん細胞の挙動にどのような影響を及ぼすかはよくわかっていない。そこで本研究では、独自のゼブラフィッシュモデルと最先端空間オミクスを駆使して、がん発生超初期過程における前がん細胞と隣接細胞の相互作用と、それに対する変異蓄積や環境要因の影響を詳細に解析し、初期腫瘍形成の未知の共通分子基盤・原理に迫る。 本年度は、最新の単一細胞空間オミクス技術PICをゼブラフィッシュがんモデルに適用することに成功し、前がん細胞におけるトランスクリプトームを解析することに成功した。また、Shhシグナル異常活性化前がん細胞とWntシグナル異常活性化前がん細胞が同様のメカニズム(Cadherin-Smad-活性酸素-Bcl2経路)によって細胞競合によって組織から排除されることを見出した(論文改訂中)。また、pHの低下や低酸素などのヒトがん組織においてみられる環境変化によって前がん細胞の動態が変化することを見出した(論文執筆中)。また、ゼブラフィッシュで発見した現象がヒトまで保存されていることを検証するために、腸オルガノイドに前がん細胞を誘導して挙動解析する系の構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一細胞空間オミクス技術PICをゼブラフィッシュがんモデルに適用することに成功し、前がん細胞におけるトランスクリプトームを解析することに成功した。また、Shhシグナル異常活性化前がん細胞が細胞競合によって組織から排除されることと、そのメカニズムを見出した。さらに、環境変化によって前がん細胞の動態が変化することを見出した。以上の結果より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、単一細胞空間オミクス技術PICを利用し、前がん細胞の感知・排除機構を解析する。 これにより、ドライバー変異ごとに異なる前がん細胞の感知・排除機構の多様性と、同時に、共通分子基盤・共通原理が存在するかについて調べていく。また、文献情報や公開データを参考にしながら、前がん細胞排除を破綻させ初期腫瘍を誘導する環境因子を探索し、その作用機序を解析する。さらに、ゼブラフィッシュで発見した現象がヒトまで保存されていることを検証するために、腸オルガノイドモデルの構築と、それを駆使した検証を進める。
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Causes of Carryover |
安価な遺伝子改変法を確立したため、節約できた。また、公開データを効率的に利用したことで候補因子を効果的に解析でき、これも節約につながった。これらの節約分を利用して次年度はより多くの遺伝子解析を行う。
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Research Products
(34 results)