2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K18254
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北西 卓磨 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (90722116)
|
Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
|
Keywords | BMI / 神経多様体 / 海馬 / デコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
脳と機械を直接に接続するブレイン・マシン・インターフェース (BMI) は、次世代サイバネティクス技術として注目されている。BMIの中核は、神経活動から情報を解読するデコーディングである。これまで、脳に電極を埋植する侵襲型デコーディングは、大脳皮質の運動野から運動意図を解読することに注力してきた。こうした研究は、神経活動によるロボットアームの操作を実現するなどの成果を挙げてきた一方で、デコーディングの精度・時間安定性・個体間の転移性などに課題をかかえている。また、解読の対象とする脳領域はおもに一次運動野に限られており、高次脳領域が保持する多彩な認知情報のデコーディングは実現されていない。たとえば、空間記憶に重要な脳領域である海馬体には、動物のいる場所・道順・移動速度・周囲の壁や物体など、空間認知に関与する多彩な情報が表現される。こうした情報を高い精度で読みだす「認知デコーディング」が実現できれば、BMIの応用可能性は飛躍的に拡大する。そこで本研究は、げっ歯類の海馬体を対象に、(i) 多点電極による大規模神経活動計測と (ii) 神経多様体に着目した独自の解析技術を組み合わせることで、高精度・時間安定・転移可能で、かつ、多様な空間認知情報を読みだす高性能デコーディング技術を開発することを目的とする。2023年度は、海馬台の神経細胞集団の発火活動が低次元神経多様体を構成し、この神経多様体から動物の多様な行動をデコーディングできることを明らかにし、この成果について論文発表をおこなった (Nakai, Kitanishi*, Mizuseki*, Sci Adv, 2024)。さらに、海馬台の局所フィールド電位 (LFP) からも動物の位置をデコードできることを明らかにし、これについて詳細な検討を継続している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、海馬体から多様な情報を解読する高性能デコーディング技術を開発することを目的としている。今年度は、海馬台の神経細胞集団の発火活動から動物の多様な行動をデコーディングできることを明らかにし、この成果について論文発表をおこなった (Nakai, Kitanishi*, Mizuseki*, Sci Adv, 2024)。さらに、海馬台の局所フィールド電位 (LFP) からも動物の位置をデコードできることを見出した。こうした進捗から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度に見出した、海馬台の局所フィールド電位 (LFP) から動物の位置をデコードできるという知見について詳細な検討をおこない、デコーディング技術を高度化する。具体的には、デコーディングの精度・時間安定性・転移可能性などについて評価をおこない、これらの評価項目について改善が必要であればデコーダーの高度化を進める。
|
Causes of Carryover |
当初は、2023年度に解析と実験の両方をおこない、おもに実験において物品費と人件費を使用する予定であった。しかし、解析が大きく進んだため、論文投稿とその改訂作業に注力し、実験量が減った。そのため、物品費と人件費の使用額が減少した。2024年度は、当初予定の実験をすすめ、物品費などに使用する予定である。
|