2023 Fiscal Year Research-status Report
分子マトリックス電気泳動による膵嚢胞性腫瘍の術前良悪性診断への挑戦
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23K18294
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
亀山 昭彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (80415661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 栄三郎 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (00447822)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | ムチン / 膵嚢胞性腫瘍 / 嚢胞液 / 糖鎖 / 分子マトリックス電気泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵嚢胞性腫瘍には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)をはじめとして良性病変から高悪性度病変まで様々なタイプの腫瘍性病変が含まれる。悪性の膵嚢胞性腫瘍の根治的治療法は外科的切除のみだが手術の侵襲は大きく、合併症発症率、致死率も低くない。そのため正確な術前診断は、不要な外科的切除を避ける上で極めて重要である。CTやMRIによる断層診断法やEUSによる画像診断法が進歩した現在においても、切除された病変の3割ほどに術前診断と異なる良性病変が含まれ、画像検査による正確な術前診断には限界がある。そこで本研究では、腫瘍の直接的な産生物質である膵嚢胞液中のムチンを詳細に解析し、膵嚢胞性腫瘍に関する新たな疾患概念の確立、そして術前診断に有用な新たな診断マーカーの発見を目指して研究を進めている。2023年度は、外科的切除標本内より採取した膵嚢胞液を用いて研究を進めるため、国立研究開発法人産業技術総合研究所生命倫理委員会ヒト由来試料実験部会および藤田医科大学大学医学研究倫理審査委員会に、人を対象とする生命科学・医学系研究に係る実験計画「膵嚢胞性腫瘍の鑑別診断、良悪性診断を目的としたバイオマーカー探索に関する研究」として申請し承認を得た。その後、10例程度の対象者から膵嚢胞液を採取した。このうち嚢胞液からムチンを濃縮する方法を検討するための必要量が確保できたものは現在のところ3例である。なおムチン定量法および分子マトリックス電気泳動によるムチンの分離については実験法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵嚢胞性腫瘍の患者から膵嚢胞液を採取した例が少なく、また嚢胞液からムチンを濃縮する方法の確立のために必要な量を確保できたものは3例しかなかった。5例が集まった段階で検討を開始する予定であり、2023年度は嚢胞液を用いた実験を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1 mL以上の膵嚢胞液が5例集まった段階で、ムチンを濃縮する方法を検討する。またその方法を用いてこれまでに集めた膵嚢胞液からムチンを濃縮し、その糖鎖解析を進める。
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Causes of Carryover |
膵嚢胞性腫瘍の患者から膵嚢胞液を採取した例が少なく、また嚢胞液からムチンを濃縮する方法の確立のために必要な量を確保できたものは3例しかなかった。5例が集まった段階で検討を開始する予定であり、2023年度は嚢胞液を用いた実験を実施できなかったため、これを2024年度に実施する必要がある。2024年度は、1 mL以上の膵嚢胞液が5例集まった段階で、ムチンを濃縮する方法を検討する。またその方法を用いてこれまでに集めた膵嚢胞液からムチンを濃縮する。濃縮したムチンを分子マトリックス電気泳動を用いて分離し、各ムチンの電気泳動移動度、ムチン種を同定したのち、各バンドから糖鎖を遊離させ糖鎖解析を行う。こうして各試料のムチンプロファイル(全ムチン量・ムチン種・移動度・糖鎖構造)を取得する計画である。
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