2023 Fiscal Year Research-status Report
Craniosynostosisにおける骨縫合部の間葉系幹細胞の老化
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23K18353
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
森山 啓司 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20262206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 卓也 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (50401360)
東堀 紀尚 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (50585221)
小林 起穂 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (20596233)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | Craniosynostosis / Apert syndrome / Cellular senescence / SASP / Senolytic drug |
Outline of Annual Research Achievements |
骨縫合は頭蓋顎顔面成長の場として重要な役割を果たす。骨縫合早期癒合症(craniosynostosis、以下Cs)は顎顔面骨格の変形を主徴とする先天性の骨系統疾患である。近年、縫合部内の間葉系幹細胞の枯渇がCsの要因であることが示された。一方、最近細胞老化(cellular senescence)の機構が明らかとなりつつあり、胚発生や創傷治癒時にも重要な役割を果たすことが報告されており、老化した細胞がsenescence-associated secretory phenotype(SASP)と呼ばれる炎症促進性の表現型を獲得することも注目されている。老化に伴って骨系幹細胞(SSC)の骨芽細胞形成能が低下することが示され、老化したSSCでは、破骨細胞の産生に関与するSASPとしてCSF1の分泌レベルが上昇することが明らかにされ老化に伴う骨量減少が生じることが報告されている。最近、薬理学的な老化細胞除去(senolysis)により組織の本来の機能が回復し、様々な病態を軽減させることが明らかとなってきているが、加齢性の骨系統疾患である骨粗鬆症や変形性関節症モデル動物に対しても有効性が報告されている。しかしながら、このような細胞老化の視点から縫合部の成長発育異常を解明しようとした試みは皆無である。そこで本研究は胎生期に冠状縫合部が早期癒合するアペール症候群モデルマウスを用いて、発生中の縫合部における間葉系幹細胞の細胞老化解析、縫合部の発生に伴う時間空間特異的なSASPの発現解析、およびSenolytic drugのCs発症に与える影響の解析を目的に研究を遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
胎生期(E15.5~E18.5)野生型マウスおよび当分野で飼育中のApert症候群モデルマウス頭蓋冠縫合部を摘出し、コラーゲナーゼ処理により、組織から骨芽細胞様細胞を分離培養した。Apert疾患モデルマウス頭蓋冠縫合部にて発生時期特異的なSA-β-gal(senescence-associated beta-galactosidase)染色、DNA損傷応答の評価、p16やp21などの細胞老化マーカーについてはすでに興味深い結果を得ている。しかしながら、Apert症候群モデルマウスの出生率が低いため、サンプルの回収に時間を要しているため、現時点では組織切片の作成までは進捗していない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もApert症候群モデルマウス頭蓋冠縫合部組織より骨芽細胞の分離培養を継続し、サンプル数を増やしていく予定である。また、冠状縫合部のパラフィン切片あるいは凍結切片を作成し、発生時期特異的なSA-β-gal(senescence-associated beta-galactosidase)染色、DNA損傷応答の評価、p16やp21などの細胞老化マーカーの変動、LaminB1の低下、IL-6, IL-8, CXCL10などのSASP遺伝子群の発現変動をRT-qPCR・免疫組織染色・Western blotにより評価する。間葉系幹細胞のマーカーであるGli1およびAxin2の発現との関連について組織学的に検索する。また、細胞培養系および頭蓋冠の器官培養系に老化細胞特異的に細胞死を誘導するsenolytic drugとして、ダサニチブ+ケルセチンやARV825を添加し、縫合部の発生や細胞の表現系変化について解析を行う。最終的には、妊娠Apert疾患モデルマウスマウスにsenolytic drugを尾静脈投与し、胎児への移行の確認後、胎児頭蓋骨発生、頭蓋顎顔面領域の形態解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度内に飼養したマウスの頭数が予想を下回り、サンプルの採集量が減少したため、当該年に計上していた動物関係の研究費が次年度繰り上げとなった。また、in vivoの実験系の進捗もやや遅れたため、購入予定の抗体等の消耗品経費が次年度繰り上げとなったため。
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