2023 Fiscal Year Research-status Report
認知症の病態を末梢から制御する老化・生活習慣関連因子の探索
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23K18416
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
若林 朋子 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (20530330)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢や生活習慣病はアルツハイマー病(AD)の後天的な危険因子である。これらの危険因子は代謝異常など、全身で老化性の変化をもたらす。本研究では、末梢において生じる老化性/抗老化性変化が、末梢由来の因子を介して脳の病態形成を制御する可能性を追究し、その分子実体を解明することを目的とする。全身循環中の因子を介した末梢と脳病態の連関を解析するため、令和5年度には、マウスの血液交換モデルを作製し、循環系の共有を実験的に確認した。この実験系を用い、24ヶ月齢の高齢マウス同士、あるいは高齢と若齢(3ヶ月齢)マウス間で検討を行うと、若齢マウスの臓器、特に肝臓において老化性の代謝変化が生じる一方、高齢マウスの臓器では変化を認めず、加齢性の変化をもたらす因子が循環系を介して共有された可能性が考えられた。次いで抗老化作用をもたらす循環系の影響を評価する目的で、老化に伴い発現上昇が知られるCD38を欠損したマウスを用いた。CD38はNADの分解酵素であり、欠損マウスでは末梢臓器ならびに脳で酵素活性 の喪失ならびにNADレベルの上昇およびが認められた。このマウスと野生型マウス間で血液交換を行った結果、NAD代謝系の抗老化性の変化がレシピエントの野生型マウスの末梢ならびに脳に影響を及ぼした。これらの結果を受け、ADの病理変化への影響を評価する目的で、脳にAD発症の原因であるアミロイドβ(Aβ)蓄積を呈するAPP TgマウスとCD38欠損マウスの血液循環共有実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である末梢由来因子の同定のための実験系を確立し、老化性の変化を示すマウスモデル、あるいは抗老化作用を示すモデルによる実験を実施した。ADモデルマウス脳の病理変化に対する影響を解析に着手しており、初年度の研究計画に沿っておおむね順調に研究を遂行している。
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Strategy for Future Research Activity |
脳のAD病態に影響を及ぼす老化依存的な末梢由来因子を明らかにするため、令和6年度にはADモデルマウス脳病理に対する CD38欠損や超高齢の影響を血液循環共有により明らかにするとともに、血液のメタボローム解析を行い、老化-抗老化で相反して変動する因子・分子経路を探索する。得られた結果に基づき、候補となる標的分子・経路を同定し、薬理学的手法などを用いてPOCを確立する。
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Causes of Carryover |
令和5年度途中で所属が異動となったため、研究環境の変化に伴って一部の予算の執行時期を後ろ倒しする必要が生じた。次年度使用額については、令和6年度初頭に主としてマウス飼育ならびに生化学的解析に関連する消耗品として使用する見込みである。
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