2023 Fiscal Year Research-status Report
大規模データ計測に基づいた革新的なスポーツ動作の評価・指導システムの構築
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23K18445
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 大地 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (70360683)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | マーカーレスモーションキャプチャ / バイオメカニクス / キネティクス / キネマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
データに基づく客観的なスポーツ身体動作スキルの評価・指導方法の構築を目指して、スポーツ動作の中でも比較的シンプルなボート漕ぎ運動(ローイング運動)を対象として、最新のマーカーレス動作分析を活用し、漕動作に関わるあらゆるデータの計測・分析・フィードバックまでを短時間で完了するシステムを構築する。2023年度は、これまで研究室で開発してきたローイングエルゴメータに各種センサを取り付け、データをリアルタイムで可視化できるシステム(RSLシステム)に、データ再生機能などを実装するなどの改良を加えるとともに、Theia3Dマーカーレスモーションキャプチャシステムとデータを結合して統一的な分析が可能になるシステムを構築した。このシステムにより、被験者一人あたりの計測・分析時間を10分程度まで短縮することが可能となった。 このシステムを用いて2023年にのべ60名程度の計測を実施した。このデータと2022年度までに得られたデータから、特にローイングパフォーマンスに繋がる可能性のあるパラメータを20程度抽出した。その結果、ローイングのストローク時のシート速度が速くならないこと、足を置くストレッチャーと呼ばれる部分への力のかけ方などの重要な要素が浮かび上がってきた。さらに、筋骨格モデリングやオールと水との物理的な相互作用を考慮にいれた理論的解析を行うことにより、これらのパラメータがなぜパフォーマンスに重要なのかについての理論的な説明を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
RSLシステムをアップデートし、より洗練された形でのデータ計測が可能になったこと、またどのように選手が漕いだのかをリアルタイムで確認できるデータ再生機能を実装したことにより、システムの有用性が大きく向上した。また、このシステムとTheia3Dマーカーレスモーションキャプチャシステムを同時にかつ簡便に利用できることができるシステムを構築し、当初想定していた被験者1名あたり20-30分の測定・解析時間を大きく短縮し10分弱で行うことができるようになった。我々のシステムで計測できるような多角的データを運動中にリアルタイムで確認でき、かつ運動後すぐにレポートが返されるシステムは他には類をみない優れたシステムである。また、このシステムを用いて、様々なレベルの選手のデータを大量に計測することにより、パフォーマンスに直結するパラメータが浮かび上がるとともに、なぜそのパラメータが重要なのかについての理論的考察も大きく進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に構築した計測システムを用いて、大学生、社会人、マスターズ選手など幅広い競技レベルを有する300名程度を対象とした計測を行い、データベースを構築する。身体動作データを競技成績、身体能力の評価値となるエルゴメータスコア、チームの属性、コーチのコメントなどとを照合することで、優れた(あるいは劣った)漕運動が有する特徴を機械学習手法等を用いて抽出する。さらにこうした優れた漕運動が有する特徴がなぜ理にかなっているのかを、運動学、運動力学的に解析することにより理論的に明らかにする。抽出された優れた漕運動の特徴に基づき、各選手の漕運動の改善すべき点を測定終了後すぐに提示するシステムを構築する。また、コーチと選手がシステムを用いて、試行錯誤的に動作の改善に取り組めるような仕組みをソフトウェアに盛り込む。こうして構築した評価・指導システムを実際に試す団体を募集し、その有用性についての検証を行う。
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Causes of Carryover |
計測機器に故障が生じ、修理が必要となったが、その額が年度末まで確定せず、結果的に少額ではあるが翌年度に繰越金が発生してしまった。修理費自体が予想していない出費であるため、繰越額はその出費を補うために適切に使用したい。
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