2023 Fiscal Year Research-status Report
暗号に基づくプログラム実行回数制限機能の構成とその応用
Project/Area Number |
23K18459
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
西出 隆志 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70570985)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 暗号技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では機密データを含むプログラムを第三者に安全に委託でき、かつそのプログラム実行回数を制限可能な技術の実現に取り組んでいる。従来の提案手法では、例えば、複数のクラウドサーバの利用を想定し、クラウドサーバが一度しかプログラム実行に必要な情報の提供に応じないという方法でプログラム実行回数の制限を実現していた。しかしより強力な攻撃者を想定したとき、全てのクラウドサーバが攻撃者に侵入されると、その安全性が破られてしまうことから、より強固な安全性を実現する手法の検討が求められていた。 その実現に向けてはウィットネス暗号方式、量子計算機、分散型電子台帳、スマートコントラクトなどの要素技術の活用が考えられる。また用いるアプローチにより、現時点では実用的ではないが理論的な有用性を持ちうる実現方法と、仕様上より制限が多いかもしれないが実用的実行速度を持ちうる実現方法の両方がありうる。今年度は、より理論的なアプローチとして、量子計算機の利用を前提とした構成法の確立に中心的に取り組んだ。そのために量子計算機を用いた近年の2つの有望な既存アプローチの調査を行った。そしてこれらの既存方式が持つ制限として、ハードウェアトークンを用いている点、またプログラム実行者がプログラム受け取り後に限られた時間内にプログラムを実行しなければならない点を明らかにした。そしてこれらの制限を取り除くための原形となる手法の提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存手法1では量子計算機とハードウェアトークンを用いている。そのためこの手法ではプログラム実行者にハードウェアトークンを渡す必要性が生じ、またその安全性がハードウェアの耐タンパ性に依存するという制限があった。また既存手法2ではハードウェアトークンを使用しないがプログラム実行者はプログラムを受け取ってから、ある限られた時間内にプログラムを実行しなければならないという制限があった。提案手法ではハードウェアトークン内で使用される関数を効率的に難読化可能な手法を導入することで、ハードウェアトークンの使用を取り除いた。またこの難読化を用いることで生じる攻撃の可能性も把握し、既存手法2で導入された可能な量子計算の深さに制限がある攻撃者の仮定も導入することで提案手法の安全性が保たれることを確認した。また難読化手法の中で必要となりうる完全準同型暗号の効率化についても取り組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での提案手法の安全性解析はまだ不十分であるため、量子計算機を使用する攻撃者を仮定した既存の安全性解析手法をさらに調査し、安全性の厳密な調査に取り組む。
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Causes of Carryover |
今年度は結果として量子計算機を用いた基本方式の確立に主に精力を注力することになった。そのため、スマートコントラクトを用いた場合の提案方式のシミュレーションなどでの使用を想定していた実験マシンの購入を次年度に行うことにした。それにより購入経費の未使用額が生じた。今後はこれらの購入に充てる。また関連する国際会議への参加による追加の情報収集のための費用にも充てることを計画している。
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