2023 Fiscal Year Research-status Report
Pioneering Research of industrial materials informatics for innovative lithium battery anodes
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23K18465
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
星 健夫 核融合科学研究所, 研究部, 教授 (80272384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道見 康弘 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (50576717)
笠松 秀輔 山形大学, 理学部, 准教授 (60639160)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | マテリアルインフォマティクス / リチウム電池材料 / 金属ケイ化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は,次世代インフォマティクスとして,工業材料むけインフォマティクスを創成することである.従来型インフォマティクスが高機能化という単一指標を対象とするのに対し,工業材料インフォマティクスでは,高機能化と長寿命化など,多面的指標の競合関係を対象にする.また,工業材料の多くは理想結晶系ではなく,非理想構造をとった系である.したがって,1つの構造を計算するだけでは不十分であり,根源的問題となっている.本研究では,最初の萌芽的ケーススタディとして,革新的リチウム二次電池への期待が大きいケイ素(シリコン, Si)系負極物質を対象とした.ケイ素は現行負極物質である黒鉛(グラファイト, C)より10倍高容量であり,実用化が渇望されている.しかし充放電サイクルを繰り返すと,早期に機能(容量)低下を起こすため,長寿命化が課題となっている.機能低下の原因は,大きな(4倍)体積膨張による材料劣化であることが指摘されている.これまでは実験を中心に研究が進んできたので,第一歩として計算科学的観点から問題の把握を行った.基盤的な計算として,従来から計算例がある,スーパーセルをとったダイアモンド構造をしたシリコン系にリチウム原子を吸蔵させた構造にたいして,計算ワークフローの確立を行った.非理想構造の系統的生成手法が重要であることがわかった.第一原理基熱力学サンプリングフレームワークabICSの利用が有用であることが示唆され,予備的手法研究を行った.また,超並列モンテカルロ法も,構造生成に有用であることがわかった.一方,複合化させるとSiのみがほとんどの容量を担うことを,第一原理計算から解明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スーパーセルをとったダイアモンド構造をしたシリコン系にリチウム原子を吸蔵させた構造にたいして,計算ワークフローを確立し,局所電子状態を計算する手法として,原子ごとの電荷であるベーダー電荷のほか,クリスタルオービタルハミルトニアンポピュレーション(COHP)が有用であることが示唆され,テスト計算をおこなった.COHPは特定原子ペアの結合エネルギーを定量化できるため,局所的電子状態の記述に適している.また,非理想構造の系統的生成手法が重要であることがわかり,それを実現できる第一原理基熱力学サンプリングフレームワークabICSの改良を行い,Li脱挿入に対する電位を規定したグランドカノニカル計算を行う機能を実装した.これを用いて、LiCoO2で妥当な電位ー電荷(SOC)曲線を計算できることを確認した.また,超並列モンテカルロ法も,構造生成に有用であることがわかった.一方,金属ケイ化物およびケイ素 (Si)はそれぞれ電気化学的にリチウム (Li)を吸蔵-放出するがこれらを複合化させるとSiのみがほとんどの容量を担うことが示唆されてきた.しかしながら、その詳細なメカニズムは不明であるため本研究において第一原理計算に基づきその解明を試みた.それぞれの材料の第一層目へLiが吸蔵される時のエネルギー障壁を計算したところ、金属ケイ化物の障壁の方が高い、すなわちSiへLiが吸蔵されやすいことがわかった.また、各材料中のLi濃度を増加させて熱力学的安定性を計算したところ、Li-Si合金の方が安定であることがわかった.当初計画通りの研究進展に加えて,当初想定していなかった知見や有用手法がみつかり,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
リチウム二次電池ケイ素系負極物質に対する工業材料むけインフォマティクスとして,リチウム近傍の局所的電子状態にたいする適切な計算手法(記述子計算),非理想構造の系統的生成手法,金属ケイ化物に対する探索(例えば種類や第一層の指数面を変えた計算),をそれぞれ行っていく.
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Causes of Carryover |
研究が発展していく過程で当初計画のなかになかった新しいアイディア(COHPなど)がうまれ,この手法を実行するための計算機を購入することとなったが,アイディアの具体化をする時間を要したため,年度内には仕様が決まらず持ち越しになった.次年度使用計画としては,上記解析に必要な計算機の購入,および,上記解析のデータを保存するためのストレージの購入にあてる.
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