2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the "consciousness" switch through waves of excitation/inhibition balance
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23K18485
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
冨永 貴志 徳島文理大学, 神経科学研究所, 教授 (20344046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高島 一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (90357351)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2026-03-31
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Keywords | 膜電位光計測法 / 意識 / 脳波 / 単離脳標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
「意識(consciousness)の有無で脳皮質活動は変わるのか?」この問いを軸に、意識の神経生理的役割の一端を膜電位可視化法で「見る」ことが目的である。意識は定義すら難しいが、意識を無くした状態は全身麻酔薬(general anesthetic)で作り出すことが可能である。全身麻酔薬は現在、毎日、全世界の医療現場で用いられているが、驚くべきことにその作用機序は現在に至るまでよくわかっていない。しかし、ヒト患者での意識喪失の過程は脳波(electroencephalography;EEG)による計測で明確に決めることができる。その過程では、EEGに特徴的なオシレーションが観察される。EEGと対応する細胞レベルでの計測は、同様の広範さで神経活動のダイナミクスをリアルタイムで可視化することのできる膜電位光計測法であると考えた。全身麻酔薬を作用させたときに現れる脳皮質活動の変化を、単離脳標本や遺伝子組込電位・カルシウムレポータを含む多彩な技術で意識の皮質活動(EEGの細胞基盤)を見ることに挑戦する。 意識は、全脳ネットワークの統合機能として非常に重要であるにも関わらず、その神経回路機構はほぼ知られていない。これは、EEG等で計測される脳の広い大規模神経ネットワークの神経活動を、個々の神経細胞の膜応答(神経細胞基盤)に対応させられる手段がないことが原因である。今回の課題は、膜電位光計測法でようやく可能になる研究であり、今、この研究を進めることが重要である。脳の大規模神経ネットワークの撹乱は多くの神経精神疾患の原因となる。本研究は、それらの疾患の予防、治療などの面でも資する。また、本研究で用いる全身麻酔薬の、妊婦、幼児への使用での遅発性の精神影響や、術後せん妄やその延長としての痴呆症のような深刻な副作用についての重要な知見も得られる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳スライスで高視野での膜電位光計測法を確立して、機能マップを作成することに着手し、前帯状皮質の神経応答の記録と、左右両側の情報伝達について神経回路機構を調べている。 この結果の一部はすでに、多くの学会で発表するとともに学術雑誌に論文として出版されている他、他の共同研究に活かされている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳スライス標本を使った機能マップの作成は、現在のペースで、異なる部位、異なる面での脳全体の機能マップの作成に展開していくとともに、当初の計画にある病態マウスの準備も進めている。
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Causes of Carryover |
初年度に論文の執筆と出版に主に注力し、新規に物品等の購入をしないでも研究が遂行できたため。来年度に、今年度購入予定であった物品等の購入と旅費等の支出を行う。
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Research Products
(24 results)