2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of Functional Dye Materials for Detecting Volatile Organohalogen Compound (VOHC) and Optical Analysis for Visualizing VOHC
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23K18521
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大山 陽介 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 教授 (60403581)
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Project Period (FY) |
2023-06-30 – 2025-03-31
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Keywords | 機能性色素材料 / 光学センサー / 揮発性有機ハロゲン化合物 / 可視化 / ピリジニウム色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有機ハロゲン分子を認識することで色調(光吸収スペクトル)が変化する有機色素(有機ハロゲンセンサー)のオルガノハロゲノクロミズム(Organohalohenochromism: OHC)に関する本研究代表者の基礎研究に基づいて、1) 試料中のみならず大気中の揮発性有機ハロゲン化合物(Volatile OrganoHalogen Compound: VOHC)を迅速、高感度で認識し可視化する機能性色素材料(有機ハロゲンセンサー色素をポリマー化、フィルム化および基板に固定化)の作製技術を開発(環境評価材料として社会実装)し、2) VOHCを検出・識別・定量・可視化できる光学的分析法(JISやISOなどの国家・国際規格化)を創成する。本年度は、VOHCsに対する光学センシング材料を開発するために、D-π-A型ピリジニウム色素モノマーOD2-Vを合成し、OD2-Vとスチレンとの共重合によりピリジニウム色素ポリマーpoly(OD2-co-Sを開発することに成功した。実際に、ガラス基板上にスピンコートしたpoly(OD2-co-S)フィルムは、乾燥時では黄色であるが、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン溶媒蒸気に曝露させると橙黄色に変化することを目視することができた。さらに、poly(OD2-co-S)フィルムが乾燥-ハロゲン溶媒蒸気曝露過程において黄色-橙黄色の良好な繰り返し特性と耐久性を有していることを実証した。これらの結果より、D-π-A型ピリジニウム色素のOHCは、色素分子とハロゲン溶媒分子との分子間相互作用に起因することが示唆され、OHC色素ポリマーはジクロロメタンやクロロホルムといったVOHCsを検出・可視化する光学センサー材料として機能することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果として、色素のオルガノハロゲノクロミズム(OHC)特性を利用して大気中の揮発性有機ハロゲン化合物(VOHCs)を検出・識別・定量・可視化できる機能性色素材料の創製を目指して、OHC特性有するD-π-A型ピリジニウム色素モノマーOD2-Vを合成した。OD2-Vとスチレンとの共重合によりピリジニウム色素ポリマーフィルムpoly(OD2-co-S)の作製に成功した。アルコキシシラン-Si(OR)3を導入したPET型蛍光性水センサーKT-2を合成した。OD2-Vとスチレンとの共重合によりピリジニウム色素ポリマーpoly(OD2-co-S)の開発に成功した。ガラス基板上にスピンコートしたpoly(OD2-co-S)フィルムにジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン溶媒蒸気を曝露した際の光吸収スペクトルを測定した結果、その光吸収波長はハロゲン溶媒蒸気曝露時において長波長シフトし、乾燥時では短波長シフトして元に戻ることがわかった。実際に、poly(OD2-co-S)フィルムは、乾燥時では黄色であるが、ジクロロメタンやクロロホルムなどのハロゲン溶媒蒸気に曝露させると橙黄色に変化することを目視することができた。さらに、poly(OD2-co-S)フィルムは、乾燥-ハロゲン溶媒蒸気曝露過程において黄色-橙黄色の良好な繰り返し特性と耐久性を有していた。このように、OHC特性を有するD-π-A型ピリジニウム色素を用いて作製したポリマーフィルムが、VOHCsを検出・可視化できる機能性色素材料であると実証することが出来き、研究目的の1)を達成したため(Materials Advances, 2024, 5, 2218-2229)。
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Strategy for Future Research Activity |
改良した有機ハロゲンセンサー色素ポリマーフィルム中におけるセンサー色素の分布度合や基板への固定化の状態について、熱分析(TG-DTA, DSC)、FT-IR、SEMやEDXから評価する。さらに、有機ハロゲンセンサー色素ポリマーフィルムのVOHCに対する光学センシング特性(光吸収波長・吸光度と各種VOHCの相関性)をUV-Vis分光光度計を用いて評価する。作製したガラス張り試料室中に有機ハロゲンセンサー色素ポリマーフィルムをセットし、有機ハロゲン溶媒を加熱することで加速発生させた蒸気(VOHC)を接触させたときの光吸収波長と吸光度の変化を測定することで、有機ハロゲン化合物の識別と検出限界を評価する。さらに、有機ハロゲンセンサー色素ポリマーフィルムの作製条件や種類(共重合ポリマーの極性・親油性など)が識別と検出限界に与える影響を分析し、識別特性(各種のVOHC間での光吸収波長差5 nm)と検出限界1 wt%以下を有するセンサー色素材料(作製技術の確立)を発掘する。VOHCの可視化とオンライン測定に関しては、センサー色素材料にVOHCを接触させて色調変化を目視および色調画像を取得(撮影)すること、およびUV-Vis分光光度計またはポータブル分光光度計を用いたその場測定による光吸収スペクトルを検出することで目標達成とする。
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Causes of Carryover |
当初の計画以上に進展していることから、次年度に有機ハロゲンセンサー色素ポリマーフィルムの改良実験を追加するため次年度使用が発生する。次年度使用額は消耗品の購入に充てる。
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