2023 Fiscal Year Research-status Report
技術の主観的意味の生成にたいする主体の能動的関与の研究
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23K18628
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
大家 慎也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50980554)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 技術的人工物 / サイボーグ / 生活世界 / 自律 / 自己改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度中は下記二課題について研究を進めた。すなわち①技術のもつ主観的意味の認知的解明、および②人間主体の能動的自己改善の能力の解明である。 まず、①については、関連文献の精読や解釈、および明らかになった成果を具体的な技術に応用するための考察をおこなった。特記すべきこととしては、すでにおこなっていた事前研究(“Subjective Meanings of Technology,” SPT2023, Tokyo, June 2023として発表)の内容を精査発展させ、具体的な技術的人工物を題材にした研究を行う見通しを得た。その研究内容は2024年中に学会発表を計画している。 次に②については、二つの方面から成果を得た。まず一つ目に、すでに開始していた事前研究(“The Cyborg Meditation Manifesto,” SPT2023, Tokyo, June 2023として発表、および“Care of the Self in a Technological Society: Stiegler and Verbeek,” INTERFACEing 2023, Kobe, September 2023として発表)の内容を精査発展させ、いわゆる大陸哲学の伝統における「反省」ないし「現象学的還元」の研究をふまえて研究を進展させる見通しを得た。つぎに、英米系自律論の成果の観点から本研究の内容を精査発展させ、とりわけAIアドバイザーという技術に焦点を当てた研究をおこなった。その成果は学会発表済みであり(「サイボーグ的な自己批判・自己改善の考察」、日本現象学・社会科学会第40回大会、京都、2023年12月として発表)、現在、英語論文として投稿中である。 本研究は生活世界の技術的構成にたいする反省的関与としての自律を明確化するという点で、自律論を技術研究の観点から推進するという意義をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進展している。まず研究に配分するための時間であるが、これは申請者が就職をしたため想定よりも若干少なくなった(令和5年8月より、京都府立医科大学にて、プロジェクト特別研究補助員および博士研究員として、研究プロジェクト推進にかかる諸業務の実行の任を得て、週30時間の勤務をおこなった)。しかしそのぶん、限られた時間を有効活用し、研究に積極的に取り組むことができた。当該年度中は下記二課題について研究を進めた。すなわち、①技術のもつ主観的意味の認知的解明、および②人間主体の能動的自己改善の能力の解明である。①についてはほぼ想定通りに研究を進めることができた。ただし年度中のアウトプット(学会発表等)をおこなうことはできなかった。これについては2024年中に内容を増補して学会発表予定である。②については予定以上に進展したといえる。とりわけ予定よりも早く次年度の計画(能動的自己改善の能力の定式化)に入る見通しを得た。なかでも英米系自律論の研究との関連付けを試みた成果を発表することができた(学会発表済み、英語論文化して投稿中)。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに研究を進める。すなわち、能動的な自己批判・自己改善において人間主体が一定の役割を果たしているという着想のもと、サイボーグ的な機能(すなわち人間の身体と人工物のカップリングが果たす機能)に焦点を当てた以下の二つの研究をおこなう。①技術の主観的意味の生成メカニズムのモデル化。とりわけ認知科学の諸研究の先行研究の成果を踏まえ、それらに包括的な理解を与える形でモデルを構築する。本研究の成果については、国際学会における研究発表、論文投稿を考えている。②能動的自己改善の能力の定式化。人間と人工物のカップリングが発揮する機能としての批判の諸能力を定式化する。とりわけ英米系自律論等の最新の研究を参照しながらこれをおこなう。本研究の成果については、日本哲学会や他の国際学会における研究発表、論文投稿を考えている。
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Causes of Carryover |
まず想定していたよりも参加・聴講する学会大会等が少なくなった。この点については季節的およびタイミングにかかる事情もあり次年度は予定通りに参加・聴講をおこなう予定である。次に必要な物品・資料等を購入する計画を立て、それを所属機関の購入担当窓口に連絡したが、当該窓口との連絡において確認不足があり、発注ができず、必要な物品・資料を年度中に購入することができなくなった。当該物品・資料は次年度において購入する予定である。
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