2023 Fiscal Year Research-status Report
The Early Acquisition of Korean Morphology based on Natural Speech Data
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23K18686
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
柳 朱燕 愛知淑徳大学, 交流文化学部, 准教授 (40647682)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 第一言語習得研究 / 韓国語の幼児言語獲得過程 / 言語習得コーパス分析 / MLU(平均発話長) / CHILDES |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、CHILDES(Child Language Data Exchange System)で公開されているRyuコーパスを利用し、MLUを基にして韓国語の基礎文法の中心に当たる動詞の活用形の獲得順序を明らかにすることを目的とする。具体的にはRyuコーパスから抽出した1,728文を対象にして分析を行った。その結果、動詞活用形の発達MLU 2.4~2.6の時点で始まり、MLUが2.9~3.2になると様々な動詞の活用が活発になり、劇的な文法発達過程が見られることが分かった。時制とアスペクトの獲得は「現在→過去→未完了アスペクト→未来」の順で習得が進む。日本語の「~して」に当たる接続詞は、韓国語ではhakoとhayseの二つの形式があるが、hakoからhayseへと習得が進む。未来の意味を表す二つの形式、hakeyssとhal keは、hal keから獲得され、hakeyssはほとんど産出されていない。否定形の獲得は非常に早い段階で(現在時制と同時に)獲得され、前置否定形anが圧倒的に使用され、後置否定形ci anhはあまり使用されていない。全体として、語末形態素の習得は、「hae(現在)→hayss(過去)→an(前置否定)→ko/a iss(未完了アスペクト)→ ko siph(希望)とhal swu iss(可能)→seyyo(丁寧な命令)とsupnida(丁寧)→hakeyss/hal ke(未来)」という過程が観察された。 本研究の結果から動詞活用形の習得過程と獲得年齢に関しては個人差が大きいが、MLU に関しては個人差が小さいことが分かった。特に本研究で示したMLU2.4~2.6の時点で動詞活用形の発達が始まり、MLUが2.9~3.2になると様々な動詞の活用が活発になり、劇的な文法発達過程が見られることは、韓国語第一言語習得研究で大きな示唆を与えると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「自然発話データに基づく韓国語の初期文法発達過程の解明」はおおむね達成した。本研究では初期文法発達の項目として「動詞の活用形態素」を設定し、その発達過程を明らかにすることを具体的な研究課題にしている。今年度、交付申請書に記載した研究計画のとおり、CHILDESのRyuコーパスを分析し「韓国語の動詞活用形」における習得過程を明らかにした。しかし、その結果から考えられる考察までは完全に行われていないため、今後、言語類型論を含む巨視的な観点から本研究の結果を考察する予定である。例えば、韓国語の時制とアスペクトの獲得は「現在→過去→未完了アスペクト→未来」の順で習得が進むことが分かったが、それが他の言語にも見られる現象であるかどうかは調べる必要がある。また、本研究で示したMLUの基準に関しても他の先行研究などを調べ、その妥当性について検証する必要がある。さらに、子どもが動詞活用形を習得したという判定基準について、「hada(する)」動詞に限定した理由についても今後検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行われた「平均発話長(MLU)による韓国語の動詞活用形の発達過程」に関する結果を基に、次年度は前述した考察を加え、「韓国語の動詞活用形の第一言語習得過程-CHILDESのRyu Corpus分析を中心に-」というタイトルで学術大会で研究発表を行い、アドバイスを受けるつもりである。実際には、国内学会(日本言語科学会Japanese Society for Language Sciences)1件と海外学会(The 31st Japanese/Korean Linguistics Conference)1件の研究発表がすでに予定されている。また、「韓国語の動詞活用形の第一言語習得過程」を主題にした論文を執筆し、国際ジャーナルに投稿する計画である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、今年度使うつもりだった旅費が使用できず、次年度に繰り越したことが挙げられる。残念ながら今年度の海外学会に投稿したが、選ばれず、旅費の使用先が不確実な状態になった。しかし、次年度の海外学会に研究発表が採択されて、二つの海外出張が予定されている。そのため、今年度の未使用分を次年度に繰り越すことにした。研究活動スタート支援の研究費が支給されるのが11月で、研究費の執行初年次は使用期間(11月~3月)が短く、計画通りに実行できなかった。今後はその実行期間も考えて計画を立てていきたい。本年度の研究計画としては、海外学会への参加等で旅費を支出する予定があり、論文投稿に伴う経費も支出する予定である。
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