2023 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Feudal Ritual Formation through the Presentation of Territorial Products to the Tokugawa Shogunate in Early Modern Japan
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23K18714
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
越坂 裕太 学習院大学, 付置研究所, 助教 (40982913)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 献上 / 機嫌伺 / 産物献上 / 主従儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、徳川将軍と諸大名を結ぶ日常的な儀礼行為として近世期に固有の存在感を持った「機嫌伺」(ご機嫌伺い)が武家社会において定着する過程とその歴史的意義の解明を目指すものである。とくに大名領内の地域産物を用いた献上行為が将軍への「機嫌伺」を名目として実施されるようになっていく政治的・社会的背景の検討を重点的課題に設定する。助成決定後の9月から研究をスタートした。 調査先としては、おもに大名家・藩政文書を有する収蔵機関を選定し、関連史料の写真撮影を行った。まず、徳川林政史研究所・金沢市立玉川図書館近世史料館・九州大学記録資料館・国文学研究資料館・茨城県立歴史館では、各地域の特産物の献上に関わる史料を閲覧し、個別の産物に絞った分析を試みた。次に、毛利博物館・山口県立文書館では、おもに慶長期から寛文期(1596~1673)に発給された徳川将軍家からの返礼状(内書・奉書)を調査し、文書中の「御機嫌伺」などの文言を手がかりに検討を進めた。 また、「献上・進物規定データベース」の作成に着手し、幕府関係者によって編纂された法令集を中心に「機嫌伺」および献上品に関わる規定を選別する作業を進め、江戸時代全体を網羅した規定データベース化を目指した。しかし、各規定の内容を考察するうえで伝達経路の確定が新たな課題として浮上したことに加え、各地に伝来する大名家文書中には、幕府側の法令集に収録されない規定も含まれることが判明した。とくに後者では初期の未見史料も確認でき、研究課題の趣旨からも優先的に追加すべきと考えられる。そのため、1年7か月という研究期間も考慮し、下限を8代将軍吉宗の時代に設定する形で計画の見直しを行った。 以上のように、見直しが必要となったものの着実に研究を遂行できており、引き続き史料収集と並行して規定データベースの構築を進める計画である。なお、成果としては研究論文1本と関連講座を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の優先的な目標に掲げた献上に対する将軍家からの返礼状の収集に関しては、慶長期から寛文期(1596~1673)までに時期を限定し、毛利博物館所蔵の将軍内書・老中奉書を調査できた。しかし、時間的制約から次回持ち越しとなった史料も含まれる。一方の個別の地域産物に絞った史料収集に関しては、承応期(1652~55)の加賀前田家において、越中・能登・加賀の初鮭・初鰤を「機嫌伺」として献上する体制が本格的に整えられたことが判明するなどの成果があった(講座にて報告)。筑前黒田家の重要な献上品である牛蒡についても、筑前国怡土郡三雲村・井原村・瑞梅寺村における具体的な生産体制を示す史料が得られた。このほか、今後の分析に期待が持てる史料を多数収集できた。 また、「献上・進物規定データベース」構築作業に関しては方針転換を迫られたものの、8代将軍徳川吉宗が隠居する延享2年(1745)を下限に設定したうえで、研究協力者と共に国立公文書館内閣文庫蔵の幕府関係者が編纂した法令集を中心に関連規定の選別と翻刻作業を進めておおむね完了した。これと関連した研究成果として、学習院大学史料館が所蔵する「柳営学」史料(三田村鳶魚・小川恭一コレクション)を用いて大名に対する個別的な幕府法令の伝達経路の分析を行い、研究論文を公表した(研究ノート「諸家系譜」にみえる申渡と家格変動―松平重昌・重冨履歴の分析を通じて―)。 以上をふまえ、おおむねと順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「献上・進物規定データベース」構築作業を通じ、研究の基盤が大きく整いつつある。この作業を継続し、次年度はおもに大名家文書から未収集の規定をデータベースに追加していくことを優先目標に掲げ、政治史的動向をふまえた分析を加速させたい。関連機関等の目録を参照し、計画的に史料収集を進めることとする。 また、「機嫌伺」が政治的行為ないし儀礼的行為として定着しつつあった寛永期前後の将軍と大名の関係性を探るうえでは、地域産物の献上が開始される背景の個別的具体的な検証とあわせ、取次・披露をつとめた幕府役人の動きに注目しつつ、その人物たちが発給に携わった返礼状の分析が有効と考えられる。本年収集済みの史料の分析と並行し、新規の調査が必要となるため、こちらも計画的に遂行する。 予想以上の史料を収集できているが、研究成果の公表が追い付いていないことが課題となる。次年度が研究期間最終年度となるので、当初の計画にはなかったが、「献上・進物規定データベース」のテキストデータおよび返礼状の分析成果を報告書などにまとめることを検討している。いずれにしても、得られた知見を研究論文として発表するとともに、効率的な研究成果の公表に努めたい。
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Causes of Carryover |
郵送料と見込んだ179円について、一部計画がずれ込んだことにより、次年度使用することとした。
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