2023 Fiscal Year Research-status Report
労働者の地域課題の意識化と学習の実態:長野県小諸厚生総合病院の労働組合に着目して
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23K18930
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木下 卓弥 北海道大学, 教育学研究院, 専門研究員 (90981621)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 地域医療 / 労働組合 / 学習運動 / 社会教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1960年代~80年代の長野県の小諸分院(小諸厚生総合病院)の医療関連労働者の学習運動に注目し、労働者の地域課題の意識化の過程および学習の 組織化の実態の解明を目指すものである。現段階の研究状況は次の通りである。 まず、1960年代~80年代の小諸分院の地域医療実践の展開およびその特異性を整理した。地域医療実践が、①患者の問題としての健康管理事業、②医療労働者の問題としての医療労働者意識改善運動、③病院と地域の問題としての地域医療福祉運動へと、課題意識および実践方法が拡張していることを明らかにした。 次に、1970年代の医療労働者の学習組織化の展開を解明した。上記のような地域医療実践の展開の背景には、労働組合を中心とする学習組織化の展開が連動している。地域医療実践が必ずしも医療労働者全体の共通課題となっていない状況を起点に、①医療労働者と地域の共通課題としての医療合理化問題、②病院内の医療労働者の協働の必要性、③地域と医療労働者にとっての医療・健康問題へと、課題意識の共通化および実践方法の拡張が確認された。 ただし、以下のような課題も残されている。第一に、小諸分院と小諸分院の前身である佐久病院、厚生連病院の組織構造や歴史の整理である。病院組織についての資料の収集が喫緊の課題といえる。第二に、地域医療実践と医療労働者の学習運動の相互関連性の分析である。これは1970年代前後の医療労働者の学習運動の展開の解明も不可欠であり、そのうえで二つの文脈の接点を見出していく必要がある。第三に、医療労働者の学習論の構築である。医療労働者の学習がどのように組織化されたのか、その条件および作用の解明が求められる。また労働者の学習運動論の総体を整理したうえで、本研究がどのように位置づかれるのかも検討しなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査対象(小諸分院)に関する資料の在りかが不明瞭で、資料収集の進捗が芳しくない。今年度は、資料および書籍を探すため現地に直接訪問することを考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針は以下のとおりである。第一に、小諸分院と小諸分院の前身である佐久病院、厚生連病院の組織構造や歴史の整理である。病院組織についての資料の収集にむけて、現地調査を行う。また可能であれば、当事者へのインタビュー調査も行い、医療労働者の学習運動の実態をより鮮明にしていく。上記の作業は夏季に取り組む予定である。 第二に、地域医療実践と医療労働者の学習運動の相互関連性の分析である。上記の資料収集と並行して、1970年代前後の医療労働者の学習運動の展開の解明も行う。その際、地域医療実践をどのように裏付けていったのかという視点で学習運動の分析が必要と考える。上記の作業は夏季までに終わらせる予定である。 第三に、医療労働者の学習論の構築である。これまでの調査活動と理論の蓄積に基づいて、医療労働者の学習がどのように組織化されたのか、その条件および作用の解明を行う。社会教育研究における労働者の学習運動論の総体を踏まえ、本研究の位置づけを明確にしていく。上記の作業は冬季までに行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は事前に入手している資料の読解と実践分析に注力したため、書籍の購入や調査活動(現地への出張)に対する支出が少なかった。また、申請直前に現地調査に行っていたこと、主要学会がオンライン開催であったことも関わっている。 しかし、これからは資料収集が必要となってくるため、現地調査を行う予定である。また調査対象についての書籍の購入が増えることも見込まれる。
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