2023 Fiscal Year Research-status Report
Methodology for the development of music based on "concepts" in the International Baccalaureate PYP
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23K18961
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Research Institution | Seiwa Junior College |
Principal Investigator |
稲生 涼子 清和大学短期大学部, その他部局等, 非常勤講師 (30980651)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 国際バカロレア / 初等教育課程 / PYP / 概念的理解 / 音楽 / 授業開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際バカロレア(IB)とは,スイスのジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構によって開発された国際的な教育プログラムである。日本では,政府主導で国際教育の推進を目的に2013年以降,国際バカロレア機構から認定を受けている学校の大幅な増加が目指されている。特に,学校教育法第一条に基づく学校がIBを導入するには,学習指導要領が定める各教科等の目標,内容とIBの内容を比較し,両方の内容を適切に取り扱えるよう工夫することが求められている。特にPYPでは,「概念」〔特徴,機能,原因,変化,関連,視点,責任〕のうち,任意の概念に基づき授業を構築することが求められている。 本研究は,未だPYPに関連する音楽の実践事例に関する報告の蓄積が乏しい状況の中,採用しづらい「概念」を特定の上,それをあえて用いてPYPに関連する音楽の授業を開発・実践し,その効果を検証することを目的としている。本研究を行うことは,PYPに関連する音楽の実践事例研究に対する貢献のみならず,一条校のPYPを導入する学校(以下PYP認定校と表記)での音楽の授業開発の示唆にもつながると考えた。 令和5年度は,PYPに関連する音楽の実践事例の分析を行った上で,主に「PYPに関連する音楽の授業で採用しづらい『概念』とはどのようなものか」,「採用しづらい『重要概念』に基づく授業とはどのようなものか」という2つの問いに基づくアンケート調査を設計し,全国のPYP認定校の教師対象に実施した。PYPに関連する音楽の授業では,関らせることが推奨されている2つのテーマ「私たちはどのように自分を表現するのか」と「世界はどのような仕組みになっているのか」がある。一部回答の集計結果,これらのテーマの内,前者とは「概念」の中でも「責任」が採用しづらいこと。また,後者とは「概念」の中でも「原因」,「視点」,「責任」が採用しづらいことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用しづらい「概念」についてアンケート調査を実施し,令和5年度中にPYPに関連する音楽の授業を開発するために必要となる知見を全国のPYP認定校で勤務する教師から得ることができた。また,アンケート調査結果の一部集計や共起ネットワーク分析も一通り終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の具体的な推進方策は次の通りである。(1)令和5年度に実施したアンケート調査における採用しづらい「概念」に基づく授業アイデアに関する自由記述回答の共起ネットワークについて,詳細な分析を行う。(2)アンケート調査結果とPYP・音楽の学習到達目標が記されている「Arts scope and sequence」や2024年4月に発行された小学校音楽科の教科書等の既存教材に基づき,PYPと「小学校学習指導要領」との両立を踏まえた授業構想を示す。(3)申請者による参与観察の下で研究協力者により実践し,研究協力者の様子と児童の様子を録画・録音する。併せて補完的に児童の概念的理解の度合いを測るために,5段階評価によるアンケート調査を実施する。これらの分析を通じて,設計した授業評価を行い,改善点も含めて分析・考察する。
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Causes of Carryover |
当初計画から変更し、より着実な調査実施のために、質問紙調査を外部委託したことで結果的に調査が効率化され、残高が生じた。 一方で次年度は、計画時に想定し得なかった研究協力者のインターナショナルスクール間の異動により、当初の計画よりも実践対象の学校・児童が増え、その分授業実施後の児童アンケートについても、資材を追加で準備する必要が生じることが判明した。そのため、当該年度の残高は、児童アンケートの印刷費の増額分の補填に活用する予定である。
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