2023 Fiscal Year Research-status Report
新参者との新たな規範形成が生じる柔らかなコミュニティの実験社会心理学的探究
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23K18991
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山縣 芽生 同志社大学, 文化情報学部, 助教 (70978981)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 規範 / 相互作用 / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
二者間の相互作用から社会的規範が形成されるプロセスを明らかにするため,これまで多くの知覚課題を用いた実験が行われてきた。主に,個体間の判断基準の類似化と個体内でのその維持をもって,二者間で規範が形成されたと結論づけられている。しかし,実験的に短時間で得られた判断基準の類似性が実際に社会的規範として機能するかは明らかとなっていない。本年度の研究では,Sherif(1936)の実験を基に単純化された実験課題を開発し,次の2点を検証した:(1)二者間で相互作用を通じて判断基準が類似するのかどうか,(2)判断基準が類似した結果,判断基準が類似していない新参者に対して排斥的な態度が生じるのかどうか。この検討を通じ,規範(判断基準)の相違があることで既存コミュニティと新参者との間に障壁が生まれるのかどうかを実証的に明らかにした。実験では,参加者がPC画面にランダムに配置されたドットの数を推定する知覚課題を用いた。参加者は個別に作業を行い,一部のフェーズでは1名または2名の他の参加者(実際にはプログラムされたbot)と一緒に作業した。知覚課題の完了後,課題相手に対する印象評定を行った。実験の結果,先に遭遇した他者との相互作用によって参加者の判断基準は変化したが,新参者の加入によってその傾向は容易に減弱することが示された。また,判断基準の類似性が,課題相手に対するポジティブな印象評定と部分的に関連していた。つまり,相互作用によって生じた判断基準の類似性は新参者への排斥的な態度を生むとはいえず,判断の類似性が他者に対する態度などに影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験課題の開発,実験の実施を予定通り遂行し,成果を学術大会で報告することができた。また,成果をまとめた論文を国際誌に投稿する準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験では,先行研究を踏襲して単純化された実験課題を作成した。次年度の実験では,今年度の成果の普遍性や文化的要素を加味した新たな実験を予定している。
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Causes of Carryover |
実験補助員の雇用,国際学会への参加,国際誌へ投稿する際の英文校閲での利用を予定していたが取りやめたため,次年度使用額が生じた。次年度は,次の実験における実験補助員の雇用費や,これまでの研究成果を国際誌に投稿する際の英文校閲費及び投稿料に使用する見込みである。
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