2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23K19035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田之上 智宏 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (70980316)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 乱流 / 情報 / 普遍性 |
Outline of Annual Research Achievements |
乱流中では従来の直観的描像に反してマクロからミクロへの情報の流れがあるということがすでに予備的知見として得られている。本研究の目的は、乱流における普遍性と情報の流れがどのように両立しているのかを情報熱力学の観点から明らかにすることである。具体的には、(i)情報の流れのもとで普遍性が創発するメカニズムの解明、および(ii)情報の流れによる乱流ゆらぎの特徴づけを行う。本年度は、(i)に関しては情報流のスケール局所性を解析的に示すことに成功した。これは乱流ゆらぎの情報がマクロからミクロへ伝言ゲームのように順繰りに伝達されているということであり、情報流があるにもかかわらず普遍的統計則が生じるメカニズムの解明に向けて有力な手がかりを与えている。(ii)に関しては、情報流と乱流ゆらぎ(速度場の高次モーメント)の間の普遍的不等式を発見した。この不等式はマクロからミクロへ情報が流れれば流れるほど小スケールでの乱流ゆらぎが増強されるということを主張している。数値的検証も行った結果、この不等式が以前の研究で得ていた不等式に比べて極めてタイトであることが判明した。この結果は、乱流ゆらぎの統計的性質の解明およびその制御に関して本質的に新しい視点を提供すると期待される。また、これらの結果に関連して、情報流が大スケール有効モデルの位相空間収縮率に等しいという非自明な等式も得られた。この等式が上記の(i)(ii)の結果を導く上で重要な関係式となっている。この結果は情報流が情報損失率を表すKolmogorov-Sinaiエントロピーとは異なる量であることも意味しており、力学系の観点から興味深い結果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は(i)情報の流れのもとで普遍性が創発するメカニズムの解明、および(ii)情報の流れによる乱流ゆらぎの特徴づけという2つの研究内容から構成されている。 (i)に関しては、Shannon第2定理を応用するという当初の計画とは異なるが、情報流のスケール局所性を解析的に示すことができた。スケール局所性は普遍性が生じるメカニズムとして極めて本質的な性質であると考えられるため、当初の計画以上に急所をついた結果が得られたといえる。 (ii)に関しては、当初の計画で予想していた通り、情報流と速度場の高次モーメントの間の普遍的不等式を証明することができた。(ii)はもともと挑戦的な最終課題という位置付けだったが1年目で達成されたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)情報の流れのもとで普遍性が創発するメカニズムの解明、および(ii)情報の流れによる乱流ゆらぎの特徴づけという2つの研究内容のいずれも当初の計画以上に進展し、ある程度目標は達成されたため、今後はこれらの結果の一般化を推し進める。具体的には、これらの結果はシェルモデルというNavier-Stokes方程式を簡単化したモデルに対してのみ証明されたものであるため、Navier-Stokes方程式に対して同様の結果を示すことを目指す。また、2次元乱流や量子乱流など他の乱流に対しても同様の解析を行い、通常の3次元流体乱流の場合と比較することも検討している。
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Causes of Carryover |
研究計画の変更により、購入予定であった計算機の購入を見送ったため次年度使用額が生じた。次年度は長期の出張を予定しているため、その旅費に有効活用する計画である。
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