2023 Fiscal Year Research-status Report
Estimating detailed crustal heterogeneity by constructing three-component Green's function method
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23K19077
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐脇 泰典 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 産総研特別研究員 (10983182)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 地下構造 / 海域地震学 / 流体 / 地殻内断層 / 異方性 / レシーバ関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
詳細な地球内部構造を調べることは,地震テクトニクスの理解に欠かせない.地球表層の地殻には,物質境界や地殻内断層,地殻流体など,様々な不均質が存在する.特に流体は地震活動に大きく影響する上,流体環境下では横波の地震波速度が大きく低下する.本研究では,遠方で発生した地震の実体波から,横波速度不均質が持つ三次元的特徴を推定する手法を構築する.陸域の地震計や海底に設置された地震計の波形記録に対して本手法を適用することで,陸域から海域における,速度不連続面や異方性構造の特徴を明らかにし,多様な地震活動の発生様式を構造的に制約することを目指す. 当該年度は主に,波形解析を行うプログラムの作成に注力した.本課題の研究項目1として,水平動二成分と上下動成分の弾性波応答(グリーン関数)を推定する手法を構築することを掲げている.Akuhara et al. (2019)に倣い,まずは水平動一成分と上下動成分のグリーン関数を推定する試作機を作成した.レプリカ交換を導入した次元遷移マルコフ連鎖モンテカルロ法をもとに,各マルコフ鎖でのグリーン関数モデルの更新を並列処理するプログラムを実装した.モデル内のパルス配置についての問題が露呈したため,複数のパラメータ設定から適切な組み合わせを検討した.また,演算時間のボトルネックを解消するために,アルゴリズムとデータ構造の改良を行った.理論波形および実波形によるテストから,グリーン関数の事後確率分布が正しく得られていることを確認した.試作機を元に,三成分波形を入力とする手法を構築中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は,三成分グリーン関数法の構築を目標に,プログラムの作成を進めていた.年度内に三成分グリーン関数法の構築には至らなかったものの,二成分のグリーン関数を計算する試作機を作成した.その過程でモデル設定や演算時間などに関する,当初検討していなかった問題点を洗い出し,それらを解決した.この試作機を元として,三成分グリーン関数法の構築が進んでいることから,本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の7月には,三成分グリーン関数法の構築を完了させる.その後,実データへの適用を進めていく.日向灘やメキシコ・ゲレロ沖,カスカディア沈み込み帯などに設置されている海底地震計の波形記録を解析対象とする予定である.これらの海域では微小地震だけでなく,スロー地震活動が活発に発生している領域であることから,本手法を用いて堆積層から海洋プレートにおけるインピーダンスコントラストと地震波異方性を推定し,多様な地震活動の発生様式を構造的に制約することを目指す. 研究成果の公表という観点では,国内外の学会・研究集会での発表と,投稿論文として国際誌に投稿することを目指す.
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Causes of Carryover |
当該年度に当初検討していた海底地震観測に参加できなかったため,予定していた国内旅費等に余剰が発生した.観測データを保存するためのデータストレージの購入費や,研究成果を発表するための学会参加費・旅費,論文出版関連費等として支出する予定である.
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