2023 Fiscal Year Research-status Report
プラズマスチーム加熱によるポリマーと金属のハイブリット直接接合技術の開発
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23K19111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高桑 聖仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00981838)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ハイブリット直接接合 / フレキシブル実装技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、別々の基板上に作製したフレキシブルエレクトロニクスの集積化に向けて、電極および基板部を同じ接合処理を用いて直接接合する新たな直接接合技術の確立を目指している。 プラズマ処置による表面活性化とスチーム処理による水分の導入と加熱を行う事で、接着剤不要の電極の直接接合及び、パリレンポリマー基板の拡散接合を同時に達成する基本的な処理条件の策定に成功した。接合断面を観察すると、金電極部は界面消失するほど原子拡散が生じており、強固な金属結合が発生していた。一方ポリマー基板部は、界面が最も電子密度が高くなり結晶性の向上またはポリマー鎖の凝集が確認され、拡散接合が生じていると考えている。そのため金属結合とポリマーの拡散接合という異なる接合メカニズムを同時に発生させるハイブリット直接接合技術の開発に成功した。またガラスやシリコン系材料等の表面にパリレンを成膜することで間接的な直接接合も達成している。従来の直接接合手法は、材料特性の違いにより、フレキシブルエレクトロニクス同士の接合における電極のみ接合可能であり基板部分は接合しないため、電極サイズと接合力がトレードオフ関係にあり、機械的に安定な高解像度接合は非常に困難であるという課題が生じていたが、本技術により基板部及び電極部すべてを直接接合する事が可能になった。したがって、機械的に安定かつ柔軟にフレキシブルエレクトロニクスを集積化することが可能であると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、基礎的な接合条件の策定を1年目で行う予定であったが、接合条件を早期に発見する事ができたため、2年目の金属とポリマーの同時接合の初期評価と応用実験をすることができた。接合強度や耐久性、断面観察など概ね論文データの取得する事ができ、当初の研究計画よりも進んでいる。また研究計画にはなかった、スチーム処理の代わりに水の滴下とオーブン加熱によるポリマー直接接合の評価も進めている。スチーム加熱には特定の装置の導入が必要となるが、水滴下とオーブン加熱にスチーム処理を代替する事で、より汎用性が向上すると考えている。さらに、シリコン系材料表面にパリレンポリマーを成膜する事で、シリコン系材料を直接接合できることも確認できているため、マイクロ流路作製応用なども視野に入れ研究をすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目にポリマーの直接接合だけでなく、金属配線とポリマー基板の同時接合の基礎実験まで進めている。引き続き、条件の最適化を行いながら、機械的評価(繰り返し曲げ試験、配線幅と接合力の関係評価)、電気的評価(接触抵抗、接合部の解像度評価)を行う。またデモンストレーションとして、実際のフレキシブルエレクトロニクスである有機LEDや有機フォトディテクターの集積化を行い、接合技術としての評価を進める。 更に汎用的な接合技術となるように、スチーム処理ではなく水滴下とオーブン加熱に代替しても同様の接合が発生するか実験を進行しており、概ね同じ接合強度を達成できている。したがって、当初の研究計画通りスチーム処理による加熱処理に加え、プラズマ処理後に水を滴下し、単なるオーブン加熱による直接接合の実験を進める予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画時よりも条件最適化が短期間で完了したために消耗品購入が抑制されたため。 また接合に必要なスチーム温度が想定より高く、低温側で高精度湿度管理が必要なかった。そのため新規装置を購入しなくとも研究室の既存設備で実験を遂行できたため。
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