2023 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト型酸化物を用いた室温動作スピントランジスタの創成
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23K19112
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武田 崇仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (00985327)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、室温を大きく超える強磁性転移温度を有する強磁性ペロブスカイト型酸化物を用いて、室温以上でも動作するスピントランジスタを実現することを目的としている。 初年度である2023年度は強磁性材料の候補物質であるBaFeO3薄膜そのもの結晶成長及びその物性の評価に取り組んだ。SrTiO3基板上にBaFeOx薄膜を分子線エピタキシー法で作製することができるようになったものの、薄膜ごとの組成のばらつきが大きく、BaFeO3の結晶成長の条件が定まっていない。結晶性の評価としてX線回折法と走査透過電子顕微鏡を用いたところ、SrTiO3基板上にエピタキシャルにBaFeOx薄膜を作製できているものの、設計値と実際の膜厚に大きなずれがあることが判明した。また、作製したBaFeOx薄膜の磁気特性を評価したが、強磁性転移温度、磁気モーメントの大きさともに先行研究で報告されている値に及んでおらず、膜質の改善が急務である。放射光施設SPring-8にてX線吸収分光実験を行い、複数のBaFeOx薄膜のFeの価数を評価したところ、一部の薄膜で4価のFeが含まれていることが分かった。BaFeO3においてFeは4価であるため、この結果は本研究課題の遂行に向けてポジティブな結果であるとともにBaFeO3の結晶成長の条件を探し出す上で重要な情報である。2024年度は高品質なBaFeO3薄膜を安定して作製するために結晶成長の条件を改良し、デバイス作製まで行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
結晶成長の要である分線エピタキシー装置の移設作業があったため実験のスタートが遅れた。しかしながら、酸素に関して組成ズレはあるものの最も困難が予想された基板上へのエピタキシャル成長には成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
BaFeO3薄膜を作製するため現在の組成ずれを解消する。方法としては2つ考えている。1つ目は、引き続き結晶成長の条件を変えて成膜し最適な条件を探すというものである。2つ目は、BaFeOx薄膜をアニールするなどの成膜後の処理をすることでBaFeO3にするというものである。そのようにして作製したBaFeO3薄膜に対し、放射光分光やデバイス加工などをして本研究課題の遂行を目指す。
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