2023 Fiscal Year Research-status Report
直流遮断時に発生する過渡アーク放電に適応したアークモデルの構築
Project/Area Number |
23K19127
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Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
津坂 亮博 愛知工業大学, 工学部, 助教 (70980613)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | アーク放電 / 直流 / 数式モデル / 遮断器 / 限流器 / 開閉器 / 過渡現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,直流用遮断装置の高性能化を最終成果として見据え,直流システムにおける電流遮断時に発生するアーク放電現象の消滅過程の解明を目指したものであり,アーク放電の過渡特性を数式アークモデルを用いて巨視的に解析できるように,直流に適応したアークモデルの構築を目的としている。具体的には,交流遮断アークの解析に用いられているMayrアークモデルとCassieアークモデルの直流遮断アークに対する適用範囲およびその拡張方法について検討を実施している。 報告者は,研究計画調書に記載の通り,これまでの研究では他の研究者から提供されたデータに基づいて実施してきた背景があり,提案したモデルの汎用性を確認するためには,追加データを取得する必要がある。したがって,まず初めに,研究環境の構築を実施した。具体的には,①直流アーク遮断装置の製作および②実験回路の構築である。まず,①については,市販の遮断装置を利用する方法も考えられるが,遮断装置内部で発生するアーク放電の様相は消弧グリッドや電極の開極に伴う気流の乱れの影響により非常に複雑であると考えられる。そのため,遮断装置で発生するアーク放電を簡易に解析するために,以下の要件を満たす装置の開発を目指した。i)カメラ等の撮影に基づく解析が実施できるようにアークを外部から観察できること。ii)電極の可動速度や可動範囲を制御できること。iii)電極の可動位置や速度が測定できること。iv)電極周辺や外部からの気流の影響を受けないこと。v)大電流・高電圧に耐えられること。試作器として,特にi),iv),v)を満たす装置の開発を実施した。②については,本研究資金から電子負荷装置を購入し,600V10Aまで実験可能な環境を構築した。今後は①で試作した装置にii)とiii)を具備させた装置を基に,②によって構築した環境において,アークの解析を実施していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗は「やや遅れている。」である。これは,直流アーク遮断装置の製作が想定していたよりも難航している為である。具体的には,遮断装置で発生するアーク放電を簡易に解析するために,以下の要件を満たす装置の開発を目指した。i)カメラ等の撮影に基づく解析が実施できるようにアークを外部から観察できること。ii)電極の可動速度や可動範囲を制御できること。iii)電極の可動位置や速度が測定できること。iv)電極周辺や外部からの気流の影響を受けないこと。v)大電流・高電圧に耐えられること。本研究年度においては,試作器として,特にi),iv),v)を満たす装置の開発を実施した。ここで,単位長さ当たりのアークの過渡特性を測定するためには,ii)とiii)を具備することが必要不可欠である。しかしながら,電極の可動速度や可動範囲を制御するための機構が想定したように製作することができなかった。また,同様に,電極の可動位置や速度の測定についても,測定機構の製作が困難であった。そのため,本研究年度では,試作器として,i),iv),v)を満たす装置の開発までは実施することができたものの,ii)とiii)を満たす装置の開発には至っていない。 したがって,直流電流遮断時のデータの取得に至らなかったことが,研究開発の進捗を遅らせた原因となっている。一方で,代替検討として,単位長さ当たりの特性を調査する前の基礎検討として,市販の遮断装置を用いた実験を実施した。遮断装置内部では非常に複雑なアークの様相となるために,単位長さ当たりの特性を調査することはできないものの,アーク全体を捉えた巨視的な特性に対して,アークモデルの適応性を調査することは重要な課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,まず,ii)電極の可動速度や可動範囲を制御できること。iii)電極の可動位置や速度が測定できること。をみたすような,直流アーク遮断装置の開発に取り組む。そして,上記らを満たすような試作器を用いて,直流アーク遮断実験を実施する。その測定結果から,電極位置の時間変化を測定することで,アーク放電の長さの時間変化を計算する。上記らと,電流,電圧波形データを用いて,単位長さ当たりの特性を調査する。さらに,単位長さ当たりの特性から,アークパラメータの推定手法について,研究計画に記した方法により解析を実施する。また,並行して,市販の遮断装置における実験により取得したデータを基にアークモデルの利用方法について,解析を実施する。
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Causes of Carryover |
装置の購入費用として使用した。残額が少なく,次年度予算と合計して使用した方が,当該研究に対して,効果的であると判断して,次年度使用額が生じた。次年度には,研究計画通りに装置の購入費用として使用する。
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