2023 Fiscal Year Research-status Report
実斜面の応力状態を再現した遠心模型実験による自然斜面の豪雨時崩壊のメカニズム解明
Project/Area Number |
23K19150
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡田 広久 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 助教 (80980755)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 遠心模型実験 / 斜面崩壊 / 豪雨 / 土砂災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,本大学が所有する遠心載荷装置に新たに模型降雨装置を作製し実斜面の崩壊現象を模型地盤で再現する研究である。今年度では模型降雨装置の製作から行った。降雨装置は圧縮空気と圧力水によって細かい霧が噴出できるノズルを使用した。遠心載荷中に斜面に対して均一な降雨強度であるか確認するため,模型斜面の形に合わせてφ16mmの塩ビパイプを模型容器に並べて確認した。また,ノズルの直近に空気と水の圧力計を取り付けて計測した。圧力値とメーカーのカタログから40μmの粒径で噴出されていることが確認できた。一方,降雨量は19.3mm/hとなり,豪雨である30mm/hには届かなかった。今後,改善する予定である。また,ノズルの角度を変えることで斜面に対して概ね均一な降雨であった。 次に,模型縮尺を1/40に設定した模型斜面の実験を行った。実験ケースは斜面角度40°,50°で行い,40°では模型斜面内部に不透水層の設置有・無で行っている。模型側面にカメラを設置し崩壊の発生形態と斜面内部にテンシオメーターを取り付けて負圧を計測した。 不透水層が無い場合では,斜面の法先から小さな崩壊が発生したが,不透水層を設けた場合では,不透水層の角部から上方向へ直線的に亀裂が入り崩壊に至った。斜面崩壊の前兆をとらえるにあたり,不透水層の角度の変化点での斜面変位を捉えることで,前兆現象が把握できる可能性が示唆される。また,テンシオメーターの挙動については,斜面中腹に設置したものが上昇に転じた後に斜面崩壊が発生しており,斜面崩壊と土壌水分計との関連について推察できることが確認され,定性的な変化を捉えることができたが,各ケースにて,遠心載荷時間がそろっておらず,初期条件を揃えていないため一概に考察することが出来ず,引き続き改善を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,遠心操作室にて所定の圧力を加えているにもかかわらず,遠心模型装置を回転させてみると,模型装置に取り付けている降雨ノズルから水が噴き出なかった。原因を調査したところ,模型側(出力側)で所定の圧力が大幅に下回っていたため,噴出しないことがわかった。圧力低下の原因は,配管を経由しているロータリージョイントにおいて,回転中に非常に大きな圧力損失が発生していることが判明し,そのため,降雨装置での圧力が不足し,降雨出来ない状態であることが分かった。ロータリージョイントの交換は遠心載荷装置の中心軸を交換することになるため,大規模改修となってしまう。この問題を克服するために,圧力系統を増やすことや,既存のコンプレッサーとは別で新たに高圧力・高容量が生み出せる空気コンプレッサーを購入するなどの対応を行ったため研究開始に時間を要した。これにより,当初考えていた降雨量よりも若干少ないが20mm/hでの噴出が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
ロータリージョイント部における圧力損失の問題は,高圧力・高容量のコンプレッサーの新規設置,圧力系統の工夫などで問題をクリアでき,降雨現象を再現することができたこと,また,斜面の崩壊現象も再現することができたので,今後は様々な実験条件で降雨実験を行いたい。ただし,豪雨といわれる30mm/hよりも低い模型降雨量であることから,さらに降雨量を増大できるよう圧力系統を変更する。 また,模型の大きさの関係で,崩壊した土砂が模型容器の壁面に当たってしまい,崩壊の進行を妨げてしまった。そのため,配置位置についてももう一度検討を行う。 一方で,動画の撮影により,降雨による斜面への浸透や地下水の形成,その後の崩壊現象に至るまで目に見えて分かるようになった。また,亀裂の発生が不透水層の角部から上に向かって発生することも分かった。不透水層の斜面角度の変化点で変状が起きやすいことを示唆しているため,実際の現場で災害発生の予兆として不透水層の変化点で変位を計測できれば,予兆を捉えることが出来ると考えている。 今後,模型縮尺率を変えて同様の結果が得られるか実験を積み重ねていきたい。
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Causes of Carryover |
当初、初年度にてPCを購入する予定であったが,実験装置の不具合により実験機器への購入を優先したため。次年度は予定通り執行する。
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