2023 Fiscal Year Research-status Report
水素の出し入れで動作するメモリスタ素子実現へのカギ:水素リザーバー電極の探索
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23K19174
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山崎 智之 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20981690)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ヒドリドイオン伝導体 / プロトン伝導体 / 混合伝導体 / メモリスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類酸水素化物からの水素イオンの出し入れに伴う電気伝導度の変化をメモリスタ素子への応用展開に向けて、本年度は以下の2点に関して研究を進めた。 1.希土類酸水素化物のイオン輸送特性の評価 2. 水素を結晶中に取り込み、かつ、水素と電子の混合伝導性を発現する水素リザーバー材料の探索 項目1に関しては、ランタン酸水素化物 (LaH3-2xOx)にPd電極を付けて、水素濃淡電池の起電力測定により、ヒドリドイオン輸率の評価を行った。LaH3-2xOx中ではヒドリドイオンの他に、正の電荷をもつキャリアの伝導を示唆する結果が得られた。LaH3-2xOx中を伝導する正の電荷をもつキャリアとして、プロトンか電子ホールが考えられる。これらの伝導キャリアは、起電力測定の結果では切り分けることが難しいため、LaH3-2xOxへの印加電流に対する水素透過量を測定(電気化学的水素ポンプ測定)し、ヒドリドイオン以外の伝導キャリア同定を遂行中である。 項目2に関しては、プロトン密度が10^22cm^-3を超えるインジウム酸水酸化物に着目し、水素気流下で過剰にその結晶中に水素が取り込まれることを見出した。その際、電気伝導度が125℃付近で7桁増大し、かつ、温度に関して可逆的に伝導度が変化することが明らかとなった。また、高温ラマン測定やプロトンNMRの結果から、この電気伝導度のジャンプとともに、インジウム酸水酸化物中のプロトンが近接する酸化物イオンの束縛から外れ、自由に動き回り始めることを発見した。酸水酸化物のこのような特性は従来報告がなく、結晶格子中への過剰水素の導入により引き起こされる新しい現象の発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は大気不安定な希土類酸水素化物を大気非曝露で合成する装置を立ち上げ、その電気化学測定まで行う環境を整えた。また、水素雰囲気下におけるインジウム酸水酸化物の興味深い特性も見出し、次年度に水素リザーバー材料としての特性を評価できる段階に来ている。 メモリスタ素子の作製においては、これらの材料の薄膜化が必須であるが、この点に関してもスパッタチャンバーの立ち上げが概ね完了しており、薄膜の作製にスムーズに移行することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はLaH3-2xOxの混合伝導性について明らかにしたが、ヒドリドイオン以外の正電荷をもつキャリア種の同定には至っていない。今後は、電気化学的水素ポンプ法により、ヒドリドイオン以外の伝導キャリアの同定を試みる。この水素ポンプ装置についても今年度までに立ち上げを完了しており、すでに実験を始めていることから、早期に結果が得られると期待している。 インジウム酸水酸化物の水素と電子の混合伝導性についても、同様の水素ポンプの測定によって、水素の拡散係数を評価し、論文としてまとめる予定である。 来年度はこれらの材料を薄膜化および積層化し、電圧印加時の抵抗変化特性を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定の予定では、初年度から希土類酸水素化物の薄膜作製を行う予定であったが、スパッタチャンバーの立ち上げに想定以上の時間を要したため、初年度に薄膜の作製を行えなかった。これに伴い、薄膜成膜用のガラス基板を本年度購入しなかったため、次年度使用額が生じた。当初の計画通り、次年度ガラス基板の購入に充てる。
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