2023 Fiscal Year Research-status Report
流体の密度分布を考慮した透過モデルに基づく透過速度解析と水蒸気分離膜の設計指針
Project/Area Number |
23K19185
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森山 教洋 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 助教 (00980301)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 膜分離 / 熱力学モデル / 拡散係数 / 水蒸気 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、【各種膜の透過データの蓄積】→【透過データのモデル解析による各パラメータの算出・関数化】→【モデルに基づく定量予測による最適な膜構造設計】の流れに沿って研究を遂行する。2023年度はSi原子間を有機架橋したシリカ膜(オルガノシリカ膜)を透過実験(ガス、水蒸気、液体の水透過率の温度および圧力依存性,混合系における透過挙動)を行った。サンプル膜種類は有機架橋構造がメタン、エタン、プロパンのオルガノシリカ膜を作製した。水蒸気の透過率を水蒸気と分子径の近い水素の透過率で規格化した規格化透過率は、プロパン、エタン、メタン架橋の順に大きいという実験データを得た。また,各種膜サンプルに対応する粉体サンプルを作製し、水蒸気の吸着特性を詳細に評価した。この吸着データを用いて“流体の密度分布を考慮したサブナノ細孔透過モデル”に基づき上述の膜透過データを解析することで、細孔内での拡散係数、吸着飽和度、吸着サイトの連続性を算出した。さらに、エタン架橋型のオルガノシリカ膜の膜細孔径を0.4-1 nmに制御し、各細孔径の膜で同様の実験・解析を行った。細孔径が小さくなるにつれ、水蒸気の規格化透過率が向上する実験的知見を得た。 また、本モデルが水蒸気のみならず、液体の水の透過現象にも適用可能性があることを見出した。エタン架橋型のオルガノシリカ膜を用いて有機溶媒を微量に含む水の透過実験を行い、当該モデルに基づく解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、エタン架橋型オルガノシリカ膜については本モデルによる透過速度解析を行った実績があったが、他の膜種については実績がなかった。有機架橋構造の形態に依らず、当該モデルに基づいた解析が可能であることを検証できた点は大きな進捗である。また、複数の膜に対する解析結果を比較することで、細孔内での拡散係数、吸着飽和度、吸着サイトの連続性のいずれが水蒸気透過率の違いに寄与しているかを評価可能となった。さらに、本モデルが水蒸気のみならず、液体の水透過速度の解析にも適用できる可能性が示されたことは、本研究のインパクトを高め得る重要な進捗である。 したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,親水性化オルガノシリカ膜やゼオライト膜に膜種を展開し,2023年度と同様の解析によって各種解析パラメータを得る。蓄積した各種解析パラメータと制御可能パラメータ(細孔径や親水性)の関係をマッピングし,これらを関数の形で紐づける。得られた関数を“流体の密度分布を考慮したサブナノ細孔透過モデル”に代入することで理論的な膜性能を制御可能パラメータ(細孔径や親水性)の関数とし,制御可能パラメータの具体的数値として製膜指針を示す。
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Causes of Carryover |
2024年度にゼオライト膜を用いた実験を計画している。当初は、当研究室で作製する予定であったが、他所から無償提供していただけることとなったため当該助成金が生じた。当該助成金は、本研究室で使用中の透過試験装置を提供されるゼオライト膜に対応可能なように仕様変更するために用いる。
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