2023 Fiscal Year Research-status Report
高濃度ドープによる面内ヘテロ型二次元トンネルトランジスタの開発
Project/Area Number |
23K19193
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小倉 宏斗 東北大学, 工学研究科, 助教 (60983327)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / 元素置換 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子層半導体である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)を、トンネルトランジスタ等の電子デバイス応用に繋げていくことは、電子情報デバイスの益々の低消費電力化が望まれる近年において、非常に重要な課題となっている。このようなデバイス応用に向け、TMDに対する電子状態制御やキャリアドープを行う上で、元素置換が重要な役割を担っている。令和5年度は、元素置換手法として、TMDの上面のカルコゲン原子のみを別原子に置換することを考えた。特に、本研究では、WSe2の上面のSe原子のみをS原子に置換した、WSeS結晶に着目し、研究を進めた。SiO2/Si基板上に機械的に剥離した単層WSe2に対し、室温下での水素プラズマ処理を行うことで、上面のSe原子がS原子に置換され、WSeSが作製されることを確かめた。また、デバイス作製および元素置換ドーピング手法の開発に向け、当該WSeS結晶の真空下での熱的安定性についても検証した。この熱的安定性の評価において、所属研究室独自のその場観測装置を用いることで、WSeSの加熱時におけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトルをリアルタイムで測定した。この結果、300℃近傍でPLピークの著しい減衰が見られたことから、300℃以上において、WSeS上面のS原子が脱離すると考えられる。以上の結果は、置換ドーピングされたTMD結晶の電子デバイス化や、新規な元素置換手法の開発に繋げていく上で、重要な知見を提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元素置換の一環として、TMDの上面カルコゲン原子を置換することに着目し、TMD系における元素の置換・脱離に関する知見を得ることに成功した。これは、原子層半導体の電子状態制御および置換型ドーピング手法の開発に繋げていく上での基盤になると考えられ、ナノ材料の低消費電力デバイス応用を推進する本研究において、重要な成果である。このことから、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、プラズマ処理によるカルコゲン原子の置換および、WSeS結晶の高温下でのカルコゲン原子の脱離について調査した。今後は、プラズマ処理と加熱処理を併用し、より高濃度に置換ドーピングされたTMD結晶の作製に挑戦する。作製した結晶に対し電極作製およびデバイス測定を行い、キャリアタイプやキャリア濃度を算出する。また、当初の計画にあった面内ヘテロ接合の作製も行い、トンネルFET動作の検証を目指していく。
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