2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of molecular mechanism of environmental response during the initiation of delignification in white-rot fungi
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23K19309
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
元田 多一 秋田県立大学, 木材高度加工研究所, 特任助教 (30981279)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 白色腐朽菌 / リグニン分解酵素 / 窒素応答 / 代謝変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の白色腐朽菌を低窒素合成液体培地(Kirk LN)で培養した所、菌糸体成長が確認された全ての菌株で、菌糸体成長が活発な時期を経てフェノールオキシダーゼ生産が活発な時期に代謝が切り替わる様子が確認された。この結果から、この「代謝の切り替わり」は白色腐朽菌に共通する基本特性である可能性が示唆された。 一方で、白色腐朽菌カワラタケをKirk LN培地(低窒素条件)およびKirk HN培地(高窒素条件)で培養した所、高窒素条件下では上記の「代謝の切り替わり」の遅延が確認された。加えて、カワラタケは、低窒素条件下では「ペルオキシダーゼ」を主に生産(全フェノールオキシダーゼの90%)するのに対し、高窒素条件下では「ラッカーゼ」を主に生産(全フェノールオキシダーゼの60%)する事が明らかになった。また、銅を含まないKirk HN培地でカワラタケを培養した所、Kirk HN培養条件に比べてラッカーゼ活性が顕著に低下し、代わりにマンガン依存性ペルオキシダーゼ(MnP)活性が有意に増加した。この事から、「窒素源が一定濃度以上存在すると白色腐朽菌のリグニン分解関連酵素の発現は抑制される事」および「ラッカーゼとMnPの生産はトレードオフの関係にあり、窒素環境がその関係を制御している事」が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、Kirk LN培養条件において複数の白色腐朽菌の代謝が「菌糸体成長期」を経て「リグニン分解酵素生産期」に切り替わる事を確認した。一方で、培地の窒素濃度によって白色腐朽菌が生産するリグニン分解酵素の構成が変化する事を見出した。この結果を受けて、研究アプローチを一部修正した為、当初の研究計画から実験手順が入れ替わった箇所があるが、追加実験からは重要な知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度の結果を基に比較条件を設定し、トランスクリプトーム解析を実施する。得られたデータから「菌糸体成長からリグニン分解酵素生産への切り替わり」、および「ラッカーゼ生産とMnP生産のトレードオフ関係」に関わる代謝経路およびシグナル伝達経路を探索する。また、異なる窒素条件下で木材腐朽試験を行い、各条件の「酵素生産様式」、「代謝応答」、および「木材腐朽様式」を比較する。以上得られた結果から、白色腐朽菌における窒素応答性とその生理的意義を評価する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画から実験手順が入れ替わった箇所がある為、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額分の予算は2024年度に実施するトランスクリプトーム解析で使用する予定である。
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