2023 Fiscal Year Research-status Report
各種エドワジエラ属細菌感染時の免疫応答の魚種間の比較
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23K19314
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
森本 和月 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(南勢), 任期付研究員 (20981616)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | エドワジエラ属細菌 / Edwardsiella / マルチプレックスPCR / E. piscicida / E. anguillarum / E. tarda |
Outline of Annual Research Achievements |
幅広い魚種に感染し魚病の原因となるエドワジエラ属細菌には、Edwardsiella tarda、E. piscicida、E. anguillarumおよびE.ictaluriの4種が知られている。しかし、菌種と感受性宿主の対応関係についてまとめられた報告はほとんどない。そこで、2023年度は、簡便にエドワジエラ属細菌を分類できるマルチプレックスPCRを確立し、国内分離株の種判別を行うことで、菌種と宿主との対応関係を調査した。はじめに、申請者らが開発したマルチプレックスPCRで合計121株の分離株を種判別した。次いで、解析に供した各分離株のDNA gyrase subunit B遺伝子配列を決定し分子系統解析を行った。その結果、マルチプレックスPCRの結果と分子系統解析の結果は一致し、申請者らが開発したマルチプレックスPCR法を用いれば、エドワジエラ属細菌の種判別が容易にかつ正確に実施できることがわかった。また、一連の解析から、ヒラメおよびスズキの分離株は全てE. piscicidaに、マダイ、カワハギおよびカンパチの分離株は、E. tardaに分類されたマダイ分離株(1株)を除いて全てE. anguillarumに分類され、ウナギの分離株には、E. anguillarum、E. piscicidaおよびE. tardaが含まれることが明らかになった。さらに、同じE. piscicidaに分類されてもウナギ由来株とヒラメ由来株では異なる遺伝子型を持つことが示唆された。同様にE. anguillarumもウナギ由来株とマダイ由来株では遺伝子型に偏りがあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は、エドワジエラ属細菌のゲノム配列間に見出した差異を検出するマルチプレックスPCRを用いれば、迅速かつ正確な種判別が可能になることを確認した。さらに、本マルチプレックスPCR法を用いて日本国内で分離されたエドワジエラ属細菌の種判別を行い、菌種と宿主との対応関係を整理することに成功した。菌種と宿主の対応関係を利用することで、エドワジエラ属細菌の病原性や宿主特異性を決定する因子の探索、および宿主の免疫応答に関する研究が展開することができるようになった。したがって、本課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、各エドワジエラ属細菌に対する魚種ごとの感受性および免疫応答の比較を行う。まず、2023年度に種判別の結果をもとに、マダイやヒラメなどに対して複数株のエドワジエラ属細菌を用いて感染試験を行い、感染後の累積死亡率を算出し、感染させた菌株ごとの感受性を評価する。次いで、攻撃菌株に対して感受性が高かった場合と低かった場合とで免疫応答がどのように異なるのかを感染魚の免疫器官のトランスクリプトーム解析から明らかにする。
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Causes of Carryover |
2023年度に申請者らがエドワジエラ属細菌の種判別を目的として開発したマルチプレックスPCRの正確性の確認を行なった。正確性が悪かった場合のプライマー発注やシークエンス費用として使用を保留していたが、本マルチプレックスPCRの正確性は十分であることが2023年3月中旬に明らかとなった。本費用は次年度、追加で日本国内で分離されたエドワジエラ属細菌の種判別を行うために用いる。
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