2023 Fiscal Year Research-status Report
Does nutrient supply from biochar promote biological nitrogen fixation?
Project/Area Number |
23K19315
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 貴則 北海道大学, 農学研究院, 助教 (40975405)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | バイオ炭 / 窒素固定 / 養分供給 / 低環境負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
農地へのバイオ炭施用による作物の増収メカニズムの一つに、土壌微生物による窒素固定の促進が考えられているが、その促進機構の完全な理解には至っていない。本研究ではこれまで真偽が不明とされてきた「バイオ炭からの養分供給仮説」が窒素固定の促進に寄与している可能性に着目して、バイオ炭と窒素固定の関係性を明らかにし、バイオ炭施用による作物増収メカニズムのさらなる理解を目指すとともに効果的なバイオ炭施用方法を提示することを目的としている。 研究初年度は生物学的窒素固定に係る重要な微量元素であるモリブデンがバイオ炭にどの程度含まれているのか、そしてそれらは生物利用可能なのかについて調べるため、バイオ炭に含まれるモリブデンを全量と可給態量に分けて定量した。その結果、牛ふんや鶏ふんなどの家畜排せつ物由来のバイオ炭は木質系(カラマツ)バイオ炭よりも100倍以上のモリブデンを含有することを確認した。また、排せつ物由来バイオ炭は赤土よりもモリブデンを全量で3~5倍、可給態量で2~10倍程度含有量が高いこと、炭化温度が高くなるほど濃縮効果によりモリブデン含有量が増加することを確認した。モリブデンの他にもリン(P)とカリウム(K)の定量も行い、どちらも排せつ物由来バイオ炭で多く含まれることが確認され、現状では排せつ物由来バイオ炭は窒素固定を促進するのに有望なバイオ炭であることが示唆された。 上記と並行して、仮説証明に必要な「養分を除去した貧栄養バイオ炭」の調製に必要な前処理法についても検討し、酸洗浄による養分除去が有望な候補であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では土壌中におけるバイオ炭からのモリブデン放出特性についてまで調査するはずであったが、想定よりもバイオ炭の分析に時間を要し、実施することができなかった。次年度の早い時期に溶出特性を把握し、早急に植物を用いた栽培試験を実施することで、バイオ炭による生物学的窒素固定の促進効果を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
バイオ炭施用によって土壌中のモリブデン利用可能量が増加することを期待し、バイオ炭からのモリブデン溶出特性について調査する。溶出試験の結果に基づき、ホワイトクローバー栽培試験にバイオ炭を施用し、栽培後の根及び根圏土壌の窒素固定能を定量化することで、バイオ炭からの養分供給が窒素固定能に及ぼす影響を明らかにする。窒素固定能の評価には代表的なアセチレン還元法に加えて、qPCRによる窒素固定に関連する遺伝子群(nifD, nifK, nifH)の定量を組み合わせることで分子レベルでその活性を評価することを予定している。
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