2023 Fiscal Year Research-status Report
土壌の過湿対策の高度化に向けた作物の光合成制限要因の定量的解析
Project/Area Number |
23K19318
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
久保田 滋裕 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (00983404)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 湿害 / 光合成 / ダイズ / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
集中豪雨や氾濫による土壌の過湿は、乾燥に次ぐ食糧生産を制限する要因であり、今後の気候変動によりその被害は深刻化すると予測されている。そのため、土壌過湿が作物収量を決定づける光合成に与える影響の評価は、多様な植物種を対象に精力的に取り組まれてきた。一方で、光合成は、光利用、気孔抵抗、葉肉抵抗、CO2固定反応の4つのプロセスによって構成されており、土壌過湿下においてボトルネックとなるプロセスは明らかになっていない。本研究では、これまで土壌乾燥条件に適用されてきた光合成制限要因の定量的解析手法を用いることで、土壌過湿下の光合成速度が“どのような要因”で“どの程度”制限されているのかを定量的に明らかにすることを目的とした。 まず、予備実験として、ポット栽培したダイズに土壌の過湿処理を施し、光合成制限要因の定量的解析手法を適用した。その結果、過湿後2日程度はCO2固定反応が光合成を制限する主要な要因となり、その後気孔抵抗が光合成を制限することが示唆された。また、排水後3日程度は気孔による制限が維持されるものの、その後はCO2固定反応が光合成を制限する主要因となった。以上の結果から、湛水期間中および排水後の回復過程においても、光合成を制限する要因が時間経過に伴って変化していることを明らかにした。また、屋外実験圃場でもダイズを栽培し、光合成およびクロロフィル蛍光の計測を実施した。しかし、今年度は、豪雨がほとんどなく、土壌の過湿が光合成に及ぼす影響を明確に観察することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、これまで土壌乾燥条件に適用されてきた光合成制限要因の定量的解析手法を用いることで、土壌過湿下の光合成速度が“どのような要因”で“どの程度”制限されているのかを定量的に明らかにすることを目的とした。既に、温室内において過湿程度を制御した条件での、ダイズの光合成制限要因の定量的解析は完了している。また、屋外圃場においてもダイズを栽培し、主に開花期以降の光合成およびクロロフィル蛍光計測を実施した。一方で、本年度は、豪雨がほとんどなく非常にダイズ栽培に好適な環境であったため、土壌の過湿の影響を明確に観察することはできなかった。今後は、必要に応じて、降雨時に潅漑を実施することで、屋外圃場において強制的に過湿環境を形成し、過湿下における光合成制限要因の定量評価を実施する。同時に1年目に完了した実験に関する投稿論文の準備を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の圃場実験では、豪雨がほとんどなく、土壌の過湿が光合成に与える影響を観察することはできなかった。そこで、今後は、必要に応じて、降雨時に潅漑を実施することで、屋外圃場において強制的に過湿環境を形成し、過湿下における光合成制限要因の定量評価を実施する。また、異なる施肥条件や畝立て条件を用意し、土壌の過湿対策の光合成の改善効果を評価する。同時に論文投稿に向けて、データ解析および論文執筆をすすめる。
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Causes of Carryover |
屋外栽培実験に使用する計画でデータロガーを計上したが、実際の実験開始時に予算の執行が間に合わず、購入を見送ったため前年度の物品費が抑えられた。そのため、前年度の実験には、一時的に研究室のデータロガーを借用し、使用した。しかし、本ロガーは栽培実験後、ほかの実験に使用されているため、次年度の実験の際には、次年度使用額を利用して新たにデータロガーを購入予定である。
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