2023 Fiscal Year Research-status Report
液状水移動メカニズムの解明による水田転換畑に固有な土塊土壌の水分予測
Project/Area Number |
23K19322
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
松本 宜大 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (80966052)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 水田転換畑 / 耕うん / 土塊(団粒) / 出芽不良 / 液状水移動 / 不飽和透水係数 / X線CT画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では,ムギやダイズ等のコメ以外の穀物の大部分が水田を転換した畑(転換畑)で栽培されているが,収量は低い.その一因として,粘土質な転換畑では、耕うんにより数センチメートルもの土塊が形成されることで、土壌の表層が乾燥しやすくなり,出芽不良が生じることが挙げられる.出芽率を高めるためには,土塊から成る土壌(土塊土壌)に特有な乾燥メカニズムを解明し,播種期の土壌水分を予測することで,乾燥が及ばない深さに播種する必要がある.研究代表者はこれまでに、土塊土壌では、風によって粗大な土塊間間隙を通した水蒸気移動が促進されるために、水分損失が大きくなることを明らかにした。これに加えて、土塊土壌では、土塊間の接触面積が小さいために、下方からの液状水供給が少ないことも乾燥の進展に寄与している可能性がある。本研究は、土塊土壌における液状水の輸送メカニズムを明らかにし、土塊土壌の乾燥過程の鉛直水分分布を予測するモデルを構築することで、乾燥が到達しない播種深度を提示することを目的としている。 今年度は、耕うん直後で砕土不良な粘土質転換畑(新潟県上越市)において、土塊土壌のサンプリングを実施した。採取した土塊土壌について、定常蒸発法により、不飽和透水係数の測定を開始した。測定の完了した一部のサンプルの結果からは、土塊土壌の不飽和透水係数が土塊径によらないことが示唆された。また、土塊土壌における、土塊同士の接触状況を明らかにするために、不飽和透水係数を測定する前に、採取した土塊土壌のX線CT画像(解像度94.4 μm)を撮影した。この画像を用いて解析を行った結果、土塊径によらず、ほとんどすべての土塊が接触しており、液状水の移動に寄与し得ること、また、液状水移動のボトルネックとなっている箇所の径が土塊径によらないということが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、耕うん直後の粘土質転換畑で土塊土壌を採取した上で、そのX線CT画像を撮影し、土壌構造に関する解析を行うことができた。また、一部のサンプルについては、不飽和透水係数の測定を終えることができた。したがって、現時点では、本研究は当初の計画通りに進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
不飽和透水係数については、測定の完了していない土塊土壌のサンプルにおいて、引き続き測定を行う。また、X線CT画像の解析を引き続き行い、パーコレーション理論等の知見を援用しながら、不飽和透水係数と関連のある土壌構造に関するパラメータの探索を実施する。以上により得られた平均土塊径と不飽和透水係数の関係を、鉛直1次元等温蒸発モデルに組み込むことで、土塊土壌の乾燥過程の鉛直水分分布が再現できるかどうかを検証する。上手くモデルが構築できれば、複数の砕土条件や降雨条件を想定した上でシミュレーションを行い、播種期間に乾燥の到達しない播種深度を提示する。
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Causes of Carryover |
当初計画では、データロガーを2台購入することとしていたが、手持ちのデータロガーを活用することで1台のみの購入で済んだために、次年度使用額が生じた。次年度は、より多くのデータを収集するために、当初予定よりも多くのサンプルでX線CT画像を撮影することを検討しており、そのための費用に充てる予定である。
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