2023 Fiscal Year Research-status Report
深層学習を用いたコンクリート表面粗さの定量的な評価
Project/Area Number |
23K19324
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
木村 優世 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門, 研究員 (40967783)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 農業水利施設 / コンクリート / 摩耗 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンクリート開水路は長年供用されると、水流等による摩耗・すり減りが進行し、骨材が露出することでその表面が粗くなり通水性能の低下が生じる。本研究は、その通水性能を簡易的かつ定量的に評価する方法として、深層学習を用いて、画像から水路躯体の表面粗さを推定できるモデルを作成することを目的としている。 R5年度は主に、現地開水路でのデータの収集とモデルの作成を行った。現地開水路は本研究の目的に沿うよう、水流等による摩耗が進行している4地区の水路を選定した。現地水路においては、モデルの学習に用いるための画像の撮影と表面粗さの計測を実施し、全174組のデータを収集した。 室内においては、収集したデータをもとにモデルの作成を行った。研究実施計画のとおり、回帰分析とセマンティック・セグメンテーションの2種類のモデルを作成した。回帰モデルは画像を入力データとし、直接表面粗さを推定するモデルであり、計測した値を正解として学習させた。学習させたモデルは実用において許容可能と考えられる精度を達成した。この成果に関してはR6年度の農業農村工学会にて発表予定である。ただし、まだ4地区のみでの結果のため、R6年度以降さらなるデータ収集を実施し、モデルの汎化性能を検証する必要がある。また、セマンティック・セグメンテーションモデルを用いる手法は、骨材の露出率をAIモデルによって求め、その値から表面粗さを推定するものである。そのため、現地で計測した表面粗さだけでなく、室内でのアノテーション作業(学習用データの作成)の必要性があり、現時点では一部のデータのみを用いた試作段階となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R5年度は主に、現地開水路でのデータの収集とモデルの作成を行った。現地コンクリート開水路では、摩耗が進行している4地区において、AIの学習に用いる画像の撮影と、撮影箇所での表面粗さの計測を実施した。粗さの計測にはデータ数の確保のため、計測の簡易性を優先し、型取りゲージと計測結果を自動解析するためのプログラムを用いる手法を選択した。また、撮影距離に関して、水路側壁の高さごとに表面粗さを計測し、そのばらつきから適切な範囲が撮影できる距離となるよう設定した。上記のようにして、R5年度終了時点で合計174組の画像と計測データの組を収集している。 室内においては、現地水路で撮影した画像と計測データを用いてモデルの作成を実施している。モデルは、画像から直接表面粗さを推定する回帰モデル、セマンティック・セグメンテーションにより骨材露出率を求め、それから表面粗さを推定するモデルの2種類を作成している。前者は現時点で実用上許容可能と考えられる精度を達成しており、R6年度に学会発表を行う予定である。後者は、アノテーション作業の必要性から現在試作段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度は、主にモデルの精度検証を目的としたデータ収集等を実施する。 本研究において作成しているモデル2種類のうち、回帰モデルはすでにある程度の精度を達成している。そのため、特に汎化性能の検証を目的としたデータの収集を行う。そのため、R5年度にデータ収集を行った4地区以外のデータを収集することが望ましい。新たな地区で実施できない場合においても、計測位置を上下流方向に変化させることなどにより、可能な限りR5年度に収集したデータと異なるものを収集する。 また、もう一方のセマンティック・セグメンテーションを利用する手法については、アノテーション作業を実施し、骨材露出率を求めるモデルの作成から行う。その後、骨材露出率と表面粗さの関係式が得られないかを検討する。また、このときAIにより求められた骨材露出率および人の手により求められた骨材露出率は、関係式を構築する上で十分な精度が達成できない可能性がある。そのため、セルオートマトン等を用いた数値シミュレーション等も行い、その関連性を考察する。
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Causes of Carryover |
深層学習に使用するデータの作成作業(アノテーション)を当初計画と異なり、R5年度は自身で行ったため、人件費の使用がなかったこと、また現地調査を科研費以外の目的での出張時に合わせて実施することとなったため、旅費の使用がなかったことにより、次年度使用額が発生した。なお、物品費については、想定していたPCスペックではモデル作成に不足している場合があり次年度に向けてパーツを購入したため、当初計画より多くなった。 次年度は学会発表にかかる費用、現地調査および学会発表を目的とした旅費、モデル作成に使用するPCの購入費用、学習用データ作成にかかる人件費としての使用を計画している。
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