2023 Fiscal Year Research-status Report
Regulatory mechanism of mitochondrial function on mitochondrial outer membrane, the interface with the host
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23K19355
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
花田 有希 立教大学, 理学部, 助教 (60980191)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 細胞内代謝 / 膜タンパク質 / 複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは細胞内を動き回り頻繁に分裂と融合を繰り返す細胞小器官(オルガネラ)である。ミトコンドリアの起源は細胞内共生した古細菌とされ、古細菌に由来する二重膜と環状のミトコンドリアDNAを持つ。ミトコンドリアの二重膜は膜の動的特性と透過性の調節により、膜の内外でタンパク質を含めたさまざまな分子のやり取りを行う。これにより、ミトコンドリアは多様な細胞代謝・細胞シグナルの反応場としての役割を果たしている。 ミトコンドリアの主要な機能である細胞内エネルギー(ATP)産生を担うタンパク質の一部を除き、大多数のミトコンドリアタンパク質は宿主細胞の核DNAの遺伝情報をもとに産生され、ミトコンドリアへ輸送される。これはミトコンドリアの自立的な複製を阻止し安全に共生関係を維持するために、ミトコンドリアがかつて保有していた因子群を宿主の管理下へ置いたためと推察されている。この仕組みに加え、細胞にはミトコンドリアの状態を監視し、異常時には適切に排斥する仕組みが存在する。そこで本研究では、宿主細胞との境界面であるミトコンドリア外膜に着目し、外膜タンパク質(例としてPINK1, MAVS, Mffなど)の生化学的変化(相互作用, 翻訳後修飾, 複合体形成)を統合的に解析することで、宿主細胞が外膜タンパク質を介してミトコンドリアを制御し、異常時には適切に排斥する分子機構の全体像の理解を目指した。 本年度実施した研究内容と成果は以下の通りである。 1. ミトコンドリア濃縮画分を用いた二次元Blue-Native/SDS-PAGEの解析系を立ち上げた。今後は、ミトコンドリア外膜タンパク質をハブとした複合体形成・構成因子の遷移を捉えることで、ミトコンドリアの表面で起こる素反応から細胞適応の本質的な理解を目指す。 2. CRISPR/Cas9を用い遺伝子欠損細胞の作製を行った。今後は1. を含めた解析へ進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「外膜タンパク質複合体の解析」については、当初の予定であった単純な(一次元の)Native-PAGEに加えて、二次元Blue-Native/SDS-PAGEの解析系を立ち上げた。これにより、ミトコンドリアタンパク質複合体の検出において、広範囲の分子量にわたる解析タンパク質の転写効率の改善や検出シグナルの特異性の担保につながることが期待される。すでに培養細胞からのミトコンドリア濃縮画分の調製法は確立しているため、今後は培養細胞の遺伝子発現抑制(RNAiやCRISPR/Cas9による遺伝子欠損)、種々の培養条件(栄養状態の変化)、タンパク質の可溶化条件の最適化を行い、当初の予定通り生化学的な解析を中心に進める。 「CRISPR/Cas9を用いた遺伝子欠損細胞の作製」については、すでにImmunoblottingによる目的タンパク質の欠損を複数の細胞クローンで確認している。今後は、プラスミドを用いて目的タンパク質の再発現を行い表現型の回復を確認することで、副作用のないクローンを選別し、上述の複合体解析等の当初の予定した解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に立ち上げた外膜タンパク質複合体の解析系と樹立した遺伝子欠損細胞を含めた複数の培養細胞を用い、細胞内代謝の状態の変化およびミトコンドリア異常に起因する外膜タンパク質複合体の特性変化(サイズ・構成因子)に着目し、当初の計画通り、生化学的研究を中心とした研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
初年度は解析系の立ち上げがメインであったため使用額が少なく、予想より少ない支出で研究を進めた。初年度の残額は最終年度である次年度と合わせ、主に消耗品費に割り当て、当初の計画に沿って本格的な解析を行う予定である。
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