2023 Fiscal Year Research-status Report
Organ morphogenesis under swimming-dependent high-speed fluctuating stress
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23K19369
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
加藤 壮一郎 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (70986843)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 発生生物学 / 生物物理学 / アフリカツメガエル / 器官形態形成 / 遊泳運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、発生後期の胚がどのように器官形態形成と運動を並行して実現しているか、器官を形作るために細胞が生み出す力と運動に伴い体内に生じる力の混線をどのように防いでいるかという問いに対し、アフリカツメガエル胚をモデルとして解明に取り組むものである。 今年度は、はじめにアフリカツメガエル胚のハイスピードイメージングの系の構築に取り組んだ。ふ化直後の胚は刺激を付与すると体をくねらせながら5cm/sec程度の速度で遊泳する。遊泳時の体の変形を精密にとらえるためには、ハイスピードイメージングの系が必要不可欠である。そこでKron Technologies社製のハイスピードカメラを導入し、マクロレンズを利用して胚の遊泳運動の高解像度・高速イメージングに取り組んだ。予備実験段階では、胚の頭部を保持し、運動する様子を通常のカメラを用いて撮影していたが、遊泳時の変形を解析するために、泳ぐ胚のイメージングに挑戦した。この場合、高解像度で撮影するために倍率を上げると、胚を画角に収めることが難しくなる。そこで、3Dプリンターを用いて胚が遊泳する細い通路を作成し、その一角をイメージングすることとした。その結果、遊泳する胚の体の変形を高解像度で撮影することに成功した。さらに撮影した画像をもとにPIV解析を行い、胚の運動を定量的にとらえることに成功した。 さらに、体の変形に対する摂動実験として、ピエゾアクチュエータを活用して、胚に遊泳運動と類似した高速変動刺激を付与する装置を作成した。胚の頭部をタングステンワイヤー製の保持具で固定し、尾部をさすまた状のタングステンプローブで挟んで高速で左右に動かすことで、遊泳と類似した高速変形を付与することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載したように、今年度はイメージング実験と摂動実験の系の立ち上げを行った。ハイスピードイメージングは発生生物学の分野で取り組まれることの少ないイメージング手法であり、機材の選定・セッティングに関して一から取り組む必要があった。当初は顕微鏡との接続を検討していたが、情報収集により、カメラ用のマクロレンズのほうが目的に合うことが判明した。設計のもと、光学定盤上にアルミフレームで土台を組み、そこに固定したLMガイドアクチュエータにハイスピードカメラを設置することで、泳ぐ胚を高倍率で背中から観察する実験系を構築することができた。このハイスピードイメージングの系は本研究を遂行する上で必要不可欠であり、撮影と解析の試行まで到達できたことで、おおむね順調に進展していると判断した。なお、研究代表者は年度末に所属機関の異動があり、データの取得と解析は今年度集中的に取り組むことを計画している。摂動実験の系についても複数個体に同時に変形を付与する装置の作成計画が順調に進んでおり、今年度は摂動実験系の完成と影響の評価にも取り組む計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
測定に関して、前年度に立ち上げたハイスピードイメージングの系を用いて、今年度は胚の変形動態を解析する。組織の伸縮の解析については、PIV解析を応用する方法と、人力で解析する方法を試すことを計画している。またマクロスケールのハイスピードイメージングにも取り組み、一度の刺激に対する運動の持続時間や振動数についても解析する。さらに、体の変形パターンと遊泳効率の関係を解析するために、水中に微粒子を混ぜて、体の周りの水の動きについても可視化することを目指す。また、摂動実験に関して、前年度に作成した装置をハイスピードイメージング装置に組み込むことで、遊泳運動との類似性を定量的に検証し、より近づけられるよう装置の調整を進める。さらに同時に複数の胚で実験できるように改良し、長時間の高速変形が形態形成に与える影響などを解析する。
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Causes of Carryover |
当初、本研究費でハイスピードカメラ(100万円以上)を購入することを計画していたが、別予算での購入が実現したことから、レンズやLMガイドアクチュエータなどの付属機器の購入に使用計画を変更した。これに伴い次年度使用額が生じた。次年度使用額、および翌年度分として請求した助成金については、主に摂動実験の並列化、イメージングの系の改良等に使用する計画である。
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