2023 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of experimental speciation genetics using chromosomal manupulation of nematodes
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23K19388
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉田 恒太 新潟大学, 脳研究所, 特任教授 (80744606)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 種分化 / 染色体進化 / 染色体操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では近縁種群との解析で、染色体進化が種分化に重要であったことが示されたPristionchus 属線虫において、染色体操作により実際に異なる核型をもつ系統を人工的に作成し、生殖的隔離が実際に生じるのか、を調べ、過去の進化的現象の再現する実験を目指している。具体的にはPristionchus pacificusの過去の染色体融合により生じた一番染色体の染色体融合領域(ChrI21Mb)にテロメア配列を挿入し染色体の開裂を引き起こし、祖先型の核型を作成する。2023年度の半年の期間に、まず染色体操作後の染色体の検鏡を容易にするため、新しい核型解析の手法を開発した。これまで線虫では大量の胚から染色体標本を作成するか、生殖腺を蛍光色素によって染めて、減数分裂期の細胞の染色体数を数えることで個体の一倍体の染色体数(n)を決めていた。これでは2倍体の染色体数(2n)について個体ごとにみることができない。今回の実験で得られるような染色体数が安定せず、ヘテロ個体が現れる系統では、2nの情報は極めて重要である。現在まだプレリミナリーな段階であるが、昆虫などで用いられる乳酸を利用した染色体のスプレッド方法を線虫に応用し、成熟個体から染色体標本を作製することに成功した。これにより2倍体の染色体数を直接観察することができるようになった。 平行して、染色体操作に必要なコンストラクトの作成を進めた。具体的には、テロメアとChrI21Mbとの相同配列をもっているものである。1月に国立遺伝学研究所から新潟大学へ異動したが、スタートアップ経費により、研究設備は整えられたので、概ね予定通り研究は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
テロメア配列のリピートを含むコンストラクトは組み換え酵素を使ったクローニングができないため、時間のかかるクローニング方法でしかコンストラクトを作成できない。そこまでは予想通りではあったが、テロメア配列の大腸菌における有害性が高いのか、さらにクローニングの効率が非常に悪い。現在、色々な手法により、うまくクローニングできるように試している。
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Strategy for Future Research Activity |
コンストラクトが作成され次第、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集を行う。現在、予備実験により新しい研究体制でもインジェクションがうまくいくことが確認されているので、準備が整い次第、実験は可能である。これにより、系統が得られれば、掛け合わせ実験により生殖的隔離の観察を行い、生殖的隔離の進化が実際に促進されたのかを確かめる。また、細胞遺伝学的観察による染色体の動態の観察やトランスクリプトーム解析による融合領域の遺伝子発現の変化などを調べ、染色体進化がもつ影響を実際に再現した系統で確かめる。
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