2023 Fiscal Year Research-status Report
睡眠中の記憶固定化における神経同期活動とシナプス可塑性の意義
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23K19393
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小柳 伊代 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (70981710)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | レム睡眠 / 海馬 / シータ振動 / 新生ニューロン / 恐怖記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
レム睡眠は夢を見る状態として知られているが、この睡眠段階で学習した記憶がどのように再生されるか、その機能についてはまだ十分には理解されていない。本研究は、レム睡眠が記憶の固定化に果たす役割とそのメカニズムを明らかにすることを目指している。特に、成体の海馬で新しく生成されるニューロンとシータ振動の同期活動が、シナプス可塑性を通じて記憶をどのように固定化するかに焦点を当てている。
研究方法としては、まず成体脳から取り出した急性スライスを使用し、スライス電気生理学実験を通じて海馬の新生ニューロンが持つスパイクタイミング依存の可塑性を詳しく調べた。さらに、記憶が固定される時期に生体内で新生ニューロンのシナプス可塑性を光操作性ツールを使用して直接的に阻害し、記憶固定化への影響を詳細に分析した。また、記憶固定化期に新生ニューロンのカルシウム活動を可視化し、光操作を同時に行う実験条件も検討した。
これらの実験から、シータ振動に同期した新生ニューロンの活動が記憶固定化にどのように寄与するかが示唆された。この知見により、シナプス可塑性を介した記憶固定化のメカニズムへの理解が深まった。本研究は、睡眠中の記憶処理メカニズムをより深く理解するための学術的基盤を築くとともに、記憶障害の治療法開発に向けた貴重な知見を提供する可能性がある。これにより、記憶と睡眠の関係を解明する上で重要なステップとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のタイムラインに沿って実験を実施しており、関連する実験技術に関してはチームメンバーにトレーニングを施し、チームの協力体制も確保している。これまでに構築した実験技術を活用し、引き続き実験を効率的に遂行することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた実験結果に関して専門家の見解とアドバイスを得て、睡眠中の記憶固定化のより詳細なメカニズムの解析をさらに進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度で計画された実験や活動が予定よりも低コストで完了したため、予算が余剰となり、次年度への繰り越しが可能となった。繰り越した予算については、実験精度と生産性の向上のために用いる。特に使用機器のメンテナンス費および修理費用、消耗品の材料費や海外渡航費の高騰に伴う費用などに充てる。
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[Presentation] 海馬のシータ振動と新生ニューロンの相互作用を介した睡眠中の記憶固定化2023
Author(s)
小柳伊代, Yuteng Wang, Sakthivel Srinivasan, 于佳卉, 直井紀枝, 大庭彰展, Deependra Kumar, Pei-Hsi Wu, Kaspar Vog, 松田信爾, Yoan Cherasse, 櫻井武, 手塚太郎, 柳沢正史, 柚崎通介, 坂口昌徳
Organizer
第46回日本神経科学大会
Int'l Joint Research