2023 Fiscal Year Research-status Report
網膜外層におけるGABA作動性介在神経細胞の応答特性と視覚機能への寄与の同定
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23K19412
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
松本 彰弘 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30802095)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 網膜 / 水平細胞 / GABA / 受容野 / 視覚情報処理 / 自然情景動画 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は、網膜のGABA作動性介在神経細胞である水平細胞の機能的特性を、形態学的・生理学的・視覚機能(行動への寄与)の観点から明らかにすることである。 2023年度は、国立遺伝学研究所への異動に伴い、本課題遂行の要となる2光子顕微鏡イメージングシステムの設置を行った。昨今の半導体不足や世界情勢の物流への影響を受け、システムの稼働に必要な機器に深刻な遅れが生じたが、1年をかけてようやくシステムの稼働に至った。Zoltan Raics氏(SENS社)と協同し構築した新たなイメージングシステムではGUIや画像取得の性能が改善されており、より効率的な実験が可能である。 顕微鏡システムの導入が遅れた一方で、実験に必要なアデノ随伴ウイルスや遺伝子改変マウスの準備は進んでいる。現在は顕微鏡システムの準備も整ったので、今年度は当初の計画に沿って実験を進める。 また、顕微鏡システムの設置と並行してマルチ電極を用いた多細胞同時記録システムの設置を行い、こちらは既にシステムが稼働している。予備的な実験として、自然情景の動画を視覚刺激として呈示し、神経節細胞タイプごとの処理特性の解析を行った。これまでに、細胞タイプ依存的な処理特性は、単一細胞の受容野よりはるかに大きなサイズでの自然情景動画を用いた視覚刺激で生じることを見出した。これは水平細胞を介した側方抑制によるものである可能性がある。従来の知見では、このような自然情景動画における処理特性について、神経節細胞タイプごとに異なる修飾効果があることを示した研究はなく、網膜での情報処理モデルに新たな知見を提供できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の進捗は、予定していたものよりもやや遅れている。理由は、昨今の半導体不足や世界情勢の物流への影響を受け、イメージング実験システムの構築に想定していたよりも長い時間がかかったためである。しかし、アデノ随伴ウイルスやマウスモデルなど、その他の実験準備は概ね順調に進んでおり、今年度は計画されていた実験を行う予定である。 また、イメージングシステムの構築が遅れている間に、マルチ電極を用いた実験によって神経節細胞の処理特性について新たな知見を得ており、水平細胞からの活動記録と合わせた処理モデルの構築が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はまず水平細胞の処理特性を機能的に同定するため、GABAイメージングを行う。合わせて、Supernova法を用い、スパースに水平細胞を標識することで、個々のシナプス部位ごとでのイベント特性を解析することで、機能と形態の連関を検討する。 また、化学遺伝学的な水平細胞の活動操作を行うことで、回路レベルでの処理特性の影響を調べる。さらに、これまでの研究で新たに見出した、水平細胞による自然情景動画処理への関与を検討するため、視覚刺激として自然情景動画を呈示し、GABA放出がどのように影響を受けるのか、検証する。 これらの実験で得られた水平細胞の処理特性の知見が、動物の行動レベルでの視覚機能にどのように関わるのか、ジフテリア毒素を用いて水平細胞を選択的に除去し、行動への影響を検討する。
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Causes of Carryover |
前年度での研究進捗が予定よりも遅れたことに伴って、実験系の構築に必要な物品や遂行に関わる薬品や消耗品等の使用が当初の想定よりも遅れた。これらの購入、使用は今年度に行う予定である。
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