2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of prodrug-type anticancer drugs using a design of experiment system based on computational chemistry and Bayesian optimization
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23K19424
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橘 椋 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (20984628)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | プロドラッグ / 抗がん剤 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
キノンメチドを放出可能な様々な未知化合物の構造をコンピュータ上に生成して量子化学計算を行った。各化合物につき、脱離基解離前の構造・キノンメチド種・水和不活化体・硫黄求核種結合状態等の多様な状態の情報を計算し収集した。これらの出力ファイルを自動解析するプログラムを作成し、分子軌道、原子電荷、溶媒和エネルギー、キノンメチド生成速度等を例として様々な化学的特徴量を抽出した。 標的酵素をGGT (γ-glutamyl transpeptidase)とし、これと反応してキノンメチド種を放出するgGlu-FMA誘導体に着目することとした。既に合成実績のある誘導体の薬効評価データ(CCKアッセイにおけるIC50等)をまとめデータセットとした。また、当研究グループにおいて過去に実施された硫黄求核種との反応速度実験等の情報収集も行い、キノンメチド種の薬効そのもののみではなく、それに間接的に関連し得る化学的特性の実験データ準備も併せて行った。 以上のような化学的特徴量と実験による薬効評価データを用いた因子分析を行い、薬効に強く影響を与えていると考えられる特徴量を絞り込んだ。例としてキノンメチドのLUMOエネルギーと脱離基の解離エネルギー等が影響の大きい要素として見出された。前者はキノンメチド種の反応性に、後者は酵素反応後のキノンメチド種生成速度に関係し、プロドラッグが細胞死を引き起こすか否かを規定する条件として合理的と考えられた。 これらの特徴量を読み込んでガウス過程回帰・獲得関数による実験計画を行うためのプログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の通り、in silicoにおいてプロドラッグ候補化合物の特徴量データベースとその解析を行うためのプログラムの作成を完了した。また、新規誘導体の合成・薬効評価を含め実験データの準備を行い、薬効の機械学習による効率的な評価を行うための化学的特徴量の探索を行い、有用なものに検討を付けた。これにより、実験計画システムに基づくプロドラッグ構造最適化を遂行するための準備が完了した。これらの知見を活かし、現在in vivoでのプロドラッグ構造最適化を行う計画を立てている。 これらの成果は当初目標としていた計画に沿った成果であったため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
プロドラッグ構造最適化の円滑な遂行のためには、予測と実験のサイクルを多く繰り返すことが重要な点であるため、薬効の評価に係る時間的コストを可能な限り軽減することが望ましい。そこで、まず評価系となるマウスを用いたin vivo実験系に関して効率的に候補化合物の機能を評価する方法を検討する。具体的には、放射線標識を用いたSPECT標識によって候補化合物のマウス体内での薬物動態・臓器分布を評価することが適当と考えており、これを円滑に行うことができるかを中心として実験検討を行う。 評価系の最適化ができ次第、既知化合物を用いて実験を行い初期データセットを取得する。これまでの細胞サンプルと比較して構造と薬効の関係に違いが生じるか、生じる場合はどのような傾向が見られるかを分析し、必要があれば薬効予測のために採用する化学的特徴量に修正を加えることも考慮する。 これを用いてガウス過程回帰を用いた実験計画システムの試験運転を行う。可能であればこれまでに作成した計算結果の解析プログラムに加え、変分オートエンコーダ等を応用してgGlu-FMA誘導体の構造を生成するプログラム新たに作成することも視野に入れる。既存のデータセットから新たに合成を行うべき新規誘導体を自動提案するプログラムを完成させる。これにより取得した候補化合物を実際に合成して薬効評価を行う対話的サイクルを繰り返し、薬効が向上するか検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は主に計算化学を用いたin silico解析による既知データの理解・データベースの拡充に努めた。既知化合物の実験・薬効評価データが予想よりも充実しており、当初想定していた機械学習に先立つ追加の有機合成・薬効評価実験を行うことが無かった。これにより主に物品費において大幅な次年度使用額が生じた。 次年度は実際にマウスを用いた候補化合物評価を多数行うことが予想されるため、昨年度繰り越し分を合わせてin vivo実験に物品費を多く使用する計画である。
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