2023 Fiscal Year Research-status Report
Cryo-EMによるABCB1トランスポーターの非特異的な多剤排出のメカニズムの解明
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23K19426
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 智子 京都大学, 薬学研究科, 助教 (60978964)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | ABCB1トランスポーター / 多剤排出 / 立体構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞の多剤耐性に関わるABCB1輸送体(P糖タンパク質またはMDR1)は、異物を細胞外へ排出し細胞内の恒常性を保つタンパク質である。ABCB1は分子骨格の異なる多種多様な疎水性薬剤を排出できることが知られているが、なぜ非特異的に多様な薬剤を基質として認識し輸送できるのかは分かっていない。そこで申請者らはすでにX線結晶構造解析で明らかになっている内向型(IF)と外向型(OF)構造に加え、基質輸送のメカニズムの理解に欠かせない中間状態の立体構造をクライオ電子顕微鏡(cryoEM)の単粒子解析によって明らかにすることを目指している。 当該年度は、CmABCB1の精製の再検討を行い目的タンパク質を最も安定な状態で回収できる条件を確定した。また膜タンパク質であるCmABCB1を精製後も脂質に包埋し自然な状態を維持するため、nanodiscと呼ばれるディスク状の脂質にCmABCB1を埋め込ための条件の最適化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、CmABCB1の精製の再検討を行った。以前まで研究室で行われていたCmABCB1の精製方法では、CmABCB1を発現させている酵母の培養条件によっては精製後のタンパク質が非常に不安定になることが精製過程で明らかになった。そのため、目的タンパク質を最も安定な状態で回収できる条件を確定し、これを用いることとした。 CmABCB1は膜タンパク質であるため、精製後も脂質に包埋されていることが望ましい。この状態を模擬するため、nanodiscと呼ばれるディスク状の脂質にCmABCB1を埋め込み、オリジナルな状態を再現した。この状態でのATPase活性を確認し、基質に対する活性を保った状態でCmABCB1を精製できることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は精製したCmABCB1に対して競合阻害剤とAMPPNP(ATPの類似物でCmABCB1に結合するが分解されない)を混合し、この状態をcryoEMで捉えることで中間体構造の解明を目指す。競合阻害剤候補のリストはすでに作成済みで、スクリーニングも開始している。 本年度はcryoEM用の実験設備の充填も行っており、より一層研究が加速することが期待できる。これまではcryoEM撮影の前日の18時までか、当日の朝に精製サンプルを調整しなければならなかったため精製方法の制約があった。しかしcryoEM観察用のグリッドを作成する設備が本年度に当研究室へ導入されたため、観察に最適なタイミングでグリッドを作成できるようになり、より構造解析に適した条件でサンプルが作成できるようになった。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた機器が想定より安く購入できたため、使用額を節約できた。また本年度は出張及び学会参加をせず研究の立ち上げに専念したため、出張費等を使用しなかった。次年度はこれらの費用を生化学実験用の試薬および学会主張費、またデータ解析用のHDDなのど購入に充てる予定である。
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