2023 Fiscal Year Research-status Report
ニコチン性アセチルコリン受容体を標的とした脳卒中後疼痛の病態解明
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23K19441
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 将貴 神戸学院大学, 薬学部, 助手 (70981116)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 脳卒中後疼痛 / ニコチン性アセチルコリン受容体 / 神経障害性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳卒中後疼痛(CPSP)モデルマウスの脳内においてニコチン性アセチルコリン(nACh)受容体を介したシグナリングが低下していることを証明するための検討を行っている。 本年度は、分子生物学的手法(定量PCR)を用いて、中枢性のnACh受容体を構成する主要なサブユニットであるα4(Chrna4)、α7(Chrna7)、β2(Chrnb2)mRNAの発現を疼痛制御に関与する脳部位において解析した。その結果、コントロールマウスと比較してCPSPモデルマウスの大脳皮質ではChrna4の発現が有意に低下し、Chrnb2の減少傾向が見られた。また、海馬ではChrnb2の減少傾向が見られ、視床ではChrna4とChrna7の有意な発現低下およびChrnb2の減少傾向が確認された。橋・延髄においては、Chrna7およびChrnb2の発現が有意に減少していた。一方、中脳ではChrna4およびChrnb2の有意な発現増加が認められ、視床下部ではいずれのサブユニットmRNAにおいても有意な発現変化は認められなかった。 これらの結果から、CPSPモデルマウスにおいて、大脳皮質および視床ではα4β2 nACh受容体の発現が、視床および橋・延髄ではα7 nACh受容体の発現が低下している可能性が示された。さらに、海馬ではβ2サブユニットを含有するnACh受容体の発現が減少している可能性が示された。対照的に、中脳ではα4β2 nACh受容体の発現が増加していることが示唆された。以上、CPSPの病態形成には脳内のnACh受容体シグナリングの変動が関与していることが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、CPSPモデルにおける脳内nAChの発現変動を分子生物学手法(定量PCR)によって解明することができた。 また、現在のところ定量には至っていないが、免疫組織化学染色の条件が定まり、脳部位特異的なnACh受容体の発現変動を解析中である。 一方、定量PCRにおいて使用するプライマー構成や最適なPCR条件、および免疫組織学的手法において使用する抗体、染色条件の設定に想定以上の時間を要したため、実験の進行に遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
定量PCRの結果より、CPSP発症時には大脳皮質、視床、橋・延髄においてnACh受容体の発現が低下している可能性が示されたため、免疫組織化学染色法を用いて脳内nACh受容体の発現低下部位をより詳細に明らかにする。CPSPモデルマウスおよびコントロールマウスから脳を摘出して冠状切片を作製し、α4、β2およびα7 nACh受容体の免疫組織染色を行う。さらに、nACh受容体の発現低下が見られた脳部位にnACh受容体サブタイプ選択的な作動薬を局所注入することで、CPSPモデルマウスにおける機械的刺激過敏が改善されるかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の体調不良により研究の遂行が困難な期間があった。また、補助事業の遂行に必要な試薬等の購入費用を他の研究費より補填したため、昨年度は補助事業費用の使用に至らなかった。今年度は、昨年度の研究計画の遅れを取り戻すため、昨年度分の費用も使用して研究を速やかに遂行する。
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