2023 Fiscal Year Research-status Report
コンドロイチン硫酸鎖の硫酸化異常による血管透過性上昇機構の解明と認知症との関係
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23K19442
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小池 敏靖 神戸薬科大学, 薬学部, 助手 (10980922)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / 糖鎖 / 硫酸化パターン / 細胞接着分子 / 血管透過性 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
コンドロイチン硫酸は、グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの二糖単位が繰り返された直鎖状の構造をもち、二糖単位は様々なパターンで硫酸化される。この硫酸化パターンに異常をきたしたマウスでは、血管から脳への物質の透過性が上昇する。 本研究では、コンドロイチン硫酸の硫酸化パターンの異常により血管透過性が上昇する原因、および血管透過性の上昇に伴い認知能力が低下するかを明らかにし、認知症発症機構の解明に寄与する。 血管透過性は、血管内皮細胞によるバリア機能の形成により調節される。このバリア機能は、細胞接着分子の結合により形成される。2023年度は、コンドロイチン硫酸と血管内皮細胞に発現する細胞接着分子が相互作用し、バリア機能の形成に寄与するかを調べた。 表面プラズモン共鳴法により解析した結果、特異的な硫酸化パターンを有するコンドロイチン硫酸と細胞接着分子が結合した。また、ヒト血管内皮細胞を用いた解析から、コンドロイチン硫酸と細胞接着分子の結合により、細胞内シグナルを介して他の細胞接着分子の発現を誘導する結果が得られた。さらに、ヒト血管内皮細胞において、特異的な硫酸化パターンを有するコンドロイチン硫酸が発現していることを確認した。 そのため、コンドロイチン硫酸は、同じく細胞表面に存在する細胞接着分子と相互作用することで血管内皮におけるバリア機能の形成に関与し、血管透過性を調節することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コンドロイチン硫酸と細胞接着分子が相互作用する結果が得られていることから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マウスの週齢による脳および血管内皮細胞における硫酸基転移酵素遺伝子の発現レベルやコンドロイチン硫酸の発現量を調べる。さらに、血液脳関門におけるバリア機能の低下が認知症に関連する可能性が報告されていることから、硫酸基転移酵素欠損マウスにおいて認知機能の低下が起きているかを調べる。 これらの解析から、コンドロイチン硫酸の血管内皮細胞におけるバリア機能制御メカニズムを明らかにし、認知症発症機構の原因解明に寄与する。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね計画通りに進展しているが、細胞を用いた解析を中心に行ったため、当初の見込み額と使用額に差が生じる結果となった。全体的な研究計画に変更はなく、前年度の繰り越し分の研究費を含め、当初の予定通り研究課題を遂行する。
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